研究課題/領域番号 |
21K19169
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
治多 伸介 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (60218659)
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研究分担者 |
中野 拓治 琉球大学, 農学部, 客員教授 (30595202)
山岡 賢 琉球大学, 農学部, 教授 (70373222)
上野 秀人 愛媛大学, 農学研究科, 教授 (90301324)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 農業集落排水施設 / 汚泥 / マイクロプラスチック |
研究実績の概要 |
本研究では,汚泥中に混入するマイクロプラスチック(以下,MPs)の,コンポスト化などの汚泥資源化過程での革新的微生物分解技術を開発することを目的に,現場の実態調査と室内実験を実施する.生活排水中の「衣類の合成繊維くず」や「洗顔剤,歯磨粉の研磨剤」などは,1次MPsとして,地球環境へ悪影響を及ぼすことが指摘されており,これらは下水処理施設への流入後,大部分が汚泥に移行する.その後,汚泥の農地還元で農地に移行して農地生態系に悪影響を与え,また,農地から流出して水系汚染を引き起こす可能性がある.MPsは,これまでは微生物では分解され難いと言われていたが,近年,分解力を持つ微生物が各所で発見され,海外では高温コンポスト施設などでのMPsの微生物分解が報告されてきている.本研究は,既存の汚泥資源化施設の適切な運転管理と最小限の技術改良で,MPsの分解を大きく促進させることを目指したもので,令和3年度には,主に,以下の内容を実施した.1.愛媛県,沖縄県などの農業集落排水施設の脱水汚泥と,それを好気性発酵させたコンポストを採取し,マイクロプラスチックの含有状況と,その特徴を調査した.2.上記で採取した,コンポストに対して,次世代シーケンサーによる微生物群集解析を実施し,施設毎の微生物群集の実態と特徴を明らかにした.これらにより,日本国内のコンポスト施設においても,マイクロプラスチックの微生物分解が進行していることが示唆された.ただし,その進行状況は施設毎に異なっていることが示された.また,MPsの分解に寄与することが指摘されているBacillus属などの微生物群集の存在状況は,各コンポスト施設で異なり,その状況を制御することで,マイクロプラスチックの分解を促進することができる可能性が示された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は,ほぼ1年にわたってコロナ禍が継続していたため,現地調査と汚泥サンプリングについては完全に進めることはできなかった.しかしながら,当初予定であった「資源化前後の汚泥のサンプリング」「資源化前後の汚泥に対する化学分析」「汚泥における微生物解析」については,おおむね予定通り進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度以降については,従来の計画通りに研究を進めていく予定である.すなわち,令和4年度は,令和3年度の調査を継続するとともに,MPs分解力の高い施設の詳細調査と微生物採取を通じて,MPs分解能力の高い微生物特性と生育環境特性を把握する.そして,令和4年度と5年度は,室内実験で,現場のMPs分解を再現し,更に高いMPs分解能力の発揮条件と,それを支える微生物種や群集構造,酵素の詳細を解明する.調査施設は,農地への汚泥利用が活発な農業集落排水施設の汚泥資源化施設を主とし,個別浄化槽,公共下水道を扱う施設も一部含める.化学分析には,実体顕微鏡・顕微FT-IR(赤外線分光分析)に加えて微細なナノ粒子レベルまでの分解を追跡できる顕微レーザーラマン分光分析,FE-SEM/EDXといった先端技術を利用し,分解の完全性を精査する.微生物解析では,次世代シーケンサー(16SrDNA配列分析)で,微生物群集の量的,質的(遺伝的系統樹等)解析を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は,ほぼ1年にわたってコロナ禍が継続していたため,現地調査と汚泥サンプリングを完全に進めることはできず,そのために次年度使用額が生じた.従って,令和4年度は,当初の2年目の計画に加えて,1年目(令和3年度)に実施できなかった現地調査とサンプリングを推進し,適切な予算執行を進める計画としている.
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