農産物市場は一般的に、農業と非農業の両サイドが買いたたき等の価格支配力を持つ双方寡占市場であると言われており、農業生産・流通技術の進歩や農業政策がもたらす農業所得増大の大きさは、非農業サイドの価格支配力に対する農業サイドの拮抗力の大きさに左右されると考えられる。 農業生産・流通技術の進歩や農業政策の影響評価を念頭に、農業と非農業の両サイドの価格支配力を定量的に分析するにあたっては、市場の需給量や価格に加え、両サイドの価格支配力の決定メカニズムをモデル化(内生化)した双方寡占市場モデルが必要となる。本研究の目的は、モデルをマルチリーダー・フォロワーゲームとして定式化することにより、価格支配力を内生化した双方寡占市場モデルを開発することである。 本研究の主な研究成果は、次のとおりである。 1.非農業サイドの各経済主体をリーダー、農業サイドの各経済主体をフォロワー、両サイドの各経済主体の価格支配力をマークアップ率として設定したうえで、双方寡占市場モデルをマルチリーダー・フォロワーゲームとして定式化し、その均衡解を具体的に求めるコンピューター・プログラムを構築した。 2.数値例を利用して双方寡占市場モデルの均衡解を具体的に求め、需要関数や費用関数等のパラメータの変化に対して均衡解がどのように変化するか比較静学分析を行い、モデルの有効性を検証した。さらに、双方寡占市場モデルを実際の農産物市場の定量分析に応用する際の課題を検討した。
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