最終年度は、国内における種イモ供給の調査結果を学会誌に投稿した。また、北海道および長崎におけるバレイショ生産の現状をについてまとめた。さらにF1種子を供給するオランダ、それを輸入し栽培するケニアで調査を実施し、調査結果について業界紙で公表した。 研究期間全体を通じて明らかにした点は、以下の3点である。第一に国内における種イモ生産の特徴を示した。バレイショでは、健全な種子用バレイショの供給のために植物防疫法が適用されており、生産できる圃場の制限、特有な作業のための労働が必要とされていた。第二に、種イモ生産における問題点を整理した。北海道のバレイショ主産地であるオホーツク地域では、ジャガイモシストセンチュウの発生により、生産できる圃場が制約されていた。また、十勝地域では、労働力保有状況が変わらないまま規模拡大が進むことで、労働集約的な種子用バレイショは大規模経営で作付面積が縮小されていた。第三に、こうした問題解決のヒントを得るために、オランダの取り組みについて示した。オランダでは、過去にジャガイモシストセンチュウが検出された圃場でも、再び種イモを生産するためのルールを構築していた。これは、土壌検診を多数行う仕組みを作ることで可能にしていた。また、F1種子をケニアに輸出し、現地でこれを用いた栽培を行っていた。 日本でオランダと同じような取り組みを行うには、多数の土壌診断を可能にする仕組みの構築や、F1種子を用いるための品種開発や技術開発など、解決すべき課題は多いが、バレイショ関係者らはF1種子体系に期待を寄せていた。
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