研究課題/領域番号 |
21K19181
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大野 耕一 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任研究員 (90294660)
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研究分担者 |
林原 絵美子 国立感染症研究所, 細菌第二部, 主任研究官 (20349822)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | Helicobacter属菌 / Helicobacter heilmannii / H. ailurogastricus / 人獣共通感染症 |
研究実績の概要 |
本研究では、ピロリ菌以外のヘリコバクター属菌(Non-Helicobacter pylori Helicobacter、以下NHPHと略す)と国内の猫および犬の胃腫瘍、とくに猫の胃リンパ腫、犬の胃癌との関連性について、疫学的、臨床的、分子生物学的そして微生物学的検討を行い、その関連性の証拠を掴むことが目的である。NHPHの分離培養技術は確立されていなかったため、菌種の同定や感染による病態の解明が進んでいなかったが、研究代表者の大野は研究分担者の林原との共同研究により、日本で初めて犬猫由来のNHPH菌株の分離培養に成功した。これまでに新種を含む複数菌種のNHPH株を分離培養したことから,本年度は得られた菌株のゲノムの決定と比較ゲノム解析を行った.
犬及び猫から分離培養したNHPH株について,ドラフトゲノムを決定し,既知のNHPH株とのAverage Nucleotide Identity値を比較したところ,2種の新種NHPHを含むことが分かった.新種のNHPHはH. heilmanniiやH. ailurogastricusと同様,H. pyloriの保有する主要な病原因子であるCagAやVacAを保有していなかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
犬及び猫から分離培養したNHPH株について,ドラフトゲノムを決定し,既知のNHPH株とのAverage Nucleotide Identity値を比較したところ,2種の新種NHPHを含むことが分かった.そのうち犬からの菌株NHP19-0003株について,完全ゲノムを決定しデータベース登録を行う共に, JCMおよびDSMへの寄託を行い,新種として報告する論文をInternational Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology投稿中である.残りの1種の新種は,DSMで培養ができず寄託ができなかったことから,上記論文に含められなかったが,違う形で新種として報告予定である.また犬よりH. bizzozeroniiを2株,猫よりH. ailurogastricus を2株分離し,ドラフトゲノムを決定した. 得られたゲノム配列を元にRoaryを用いたパンゲノム解析を行い,284遺伝子のcore gene配列を元にした系統樹を作成したところ,犬猫由来のNHPHは,本研究で分離した新種は猫由来H. heilmanniiやH. ailurogastricusと類似しており,H. bizzozeronniiやH. felisのCladeとは異なるCladeに含まれていた. 新種のNHPHはH. heilmanniiやH. ailurogastricusと同様,H. pyloriの保有する主要な病原因子であるCagAやVacAを保有していなかった.
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今後の研究の推進方策 |
先行研究により,犬および猫のNHPHには多種のHelicobacter属菌が含まれることが分かっている.これらの菌種はゲノム解析でないと菌種が決定できないことから,引き続き犬猫由来の菌株を培養しゲノム解析により菌種を決定し,NHPH菌種と犬および猫の疾患との関連を臨床的に検証していく.また,得られた菌株を用いたin vitro感染実験によるトランスクリプトームの比較およびin vivo感染実験における感染組織像の比較等により感染病態の評価を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
予定した人件費、謝金がコロナ禍の状況で変更となったため。
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