研究課題/領域番号 |
21K19186
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
束村 博子 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (00212051)
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研究分担者 |
上野山 賀久 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (70324382)
井上 直子 名古屋大学, 生命農学研究科, 講師 (90377789)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | キスペプチン / Kiss1 / エストロゲン / 発達脳 |
研究実績の概要 |
発達期の脳へのエストロゲン感作により、キスペプチンニューロンにおけるKiss1発現が特異的かつ不可逆に消失するメカニズムを解明するために、下記の研究を実施した。 (1)キスペプチンニューロンを常時可視化できる遺伝子改変ラットの作出 : キスペプチンニューロンをKiss1発現の有無に関わらず蛍光蛋白により常時可視化できる遺伝子改変ラットの作製に成功した。さらに、発達期の様々なフェーズにおいて(生後1日~成体まで)の脳における蛍光発現細胞を組織学的に検索し、その発現細胞数と発現の時期に雌雄差があることを明らかにした。 (2)発達脳でエストロゲンが活性化する候補遺伝子群のリスト化 : (1)で作製したキスペプチンニューロン常時可視化ラットを用いて、雌雄ラットおよび新生時期のステロイド処理・不処理ラットの視床下部から蛍光蛋白を指標としてキスペプチンニューロンを単離するために、現在、Fluorescence-Activated Cell Sorting(FACS)をもちいた単離方法を確立中である。これにより、新生仔期のステロイド環境により大きく変動し、かつエストロゲン受容体とのインタラクションを介して遺伝子の転写に関わる可能性が高い候補を10遺伝子程度に絞り込む予定である。 (3)In vitro細胞培養系および組織学的解析による候補遺伝子群の絞り込み : (1)(2)で得られる予定の遺伝子の絞り込みを可能とするin vitro不死化細胞培養系を確立するとともに、候補遺伝子のsiRNA(in vitro用)およびshRNA(in vivo用)によりKiss1発現抑制が候補遺伝子の役割を明らかにする方法論を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要の通り、計画通り、おおむね順調に進展しているから。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、哺乳類において発達脳への性ステロイドホルモン感作が、生涯にわたって生殖機能を抑制する分子メカニズムの解明を目指し、これを通じて、エピジェネティック機構など既知のメカニズムでは説明出来ない「キスペプチン遺伝子(Kiss1)に特異的かつ不可逆な発現抑制を担うプログラミング機構」を解明することを目的としており、次年度に得られる候補遺伝子リストを活用し、その生理的役割を明らかにするためのin vivo実験における証明を目指している。具体的には、発達期のエストロゲン感作により、どのような機序によりKiss1発現が時空間的に特異的、かつ不可逆に抑制されるかについて、その新規な分子機構を明らかにすることを目指している。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究実績の概要の通り、おおむね順調に進展しているものの、キスペプチンニューロン常時可視化ラットからキスペプチンニューロンを単離するためのFACSをもちいた方法の確立に、予定よりも時間がかかったため、次年度に一部の研究費を繰り越さざるを得なかった。具体的には、FACS後に得た細胞から充分量のRNAを得るための条件設定に、予定より数ヶ月の遅れがでたためである。
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