研究課題/領域番号 |
21K19187
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大蔵 聡 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20263163)
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研究分担者 |
松山 秀一 名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (50455317)
森田 康広 帯広畜産大学, 畜産学部, 准教授 (90818262)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / キスペプチン / エレクトロポレーション / 受精卵 / GnRH / 排卵 / ヤギ / 卵胞嚢腫 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヤギ受精卵におけるゲノム編集により作出したゲノム編集ヤギを用いてキスペプチン遺伝子を視床下部内局所でノックアウトし、卵胞嚢腫病態モデルの作出に挑戦する。ウシの受胎率低下要因のひとつである卵胞嚢腫は、多くの卵胞が排卵することなく卵巣に存在するため、排卵を調節する視床下部神経機構の機能不全が原因と想定される。本研究では、ヤギをウシのモデル動物として用い、ゲノム編集により作出した卵胞嚢腫病態モデルにより、家畜の排卵制御中枢のメカニズムを解明することを目的とする。 本年度は、ヤギ受精卵におけるゲノム編集(受精卵エレクトロポレーション(EP)法)により、これまで報告のないゲノム編集ヤギの作出技術の確立と検証を行った。キスペプチン遺伝子座への外来遺伝子ノックインは成功率が低いことが予想されたため、まず、キスペプチン遺伝子の全身性ノックアウトを試みた。ヤギキスペプチン遺伝子のエクソン2領域にガイドRNA(gRNA)を複数設計し、EGxxFPアッセイにより各gRNAの標的配列切断活性を評価して高効率な切断活性を示すgRNAを選定した。次に、選定したgRNAにより、過剰排卵誘起処置を施したヤギから採取した1細胞期胚を用いてゲノム編集を行い、ゲノム編集胚の胚発生率およびゲノム編集胚のジェノタイピングによるゲノム編集率を指標として、最適なEP条件を決定した。以上の検討により最適化したEP条件を用いて、1細胞期胚のゲノム編集を行い、得られたゲノム編集胚を7日間培養した胚盤胞を受胚ヤギに移植した。その結果、ゲノム編集胚移植を行った受胚ヤギ6頭中1頭の妊娠が確認できた。今後は、出生個体のジェノタイピングによりゲノム編集の成否の評価を行うとともに、ゲノム編集ヤギが得られた場合には経時的な体重測定による成長特性評価と、黄体形成ホルモン分泌動態の解析による繁殖機能評価を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、1細胞期受精卵におけるゲノム編集技術(受精卵エレクトロポレーション法:GEEP法)により、キスペプチン遺伝子座にloxP配列を配置した外来遺伝子をヤギ受精卵に導入し、遺伝子ノックイン胚を発生培養した後に受胚ヤギに移植することを予定していた。しかし、キスペプチン遺伝子座への外来遺伝子ノックインは成功率が低いことが予想されたこと、また、ゲノム編集ヤギの作出はこれまで報告例がないことから、より平易な手法であるキスペプチン遺伝子の全身性ノックアウトによりゲノム編集ヤギを作出する技術の確立を主眼とした研究を実施した。その結果、高効率な標的配列切断活性を有するgRNAの選定、エレクトロポレーション条件の最適化と、高いゲノム編集率を得る手法を確立できた。また、1細胞期胚におけるエレクトロポレーションによるゲノム編集により得られたゲノム編集胚を移植した受胚ヤギ6頭のうち1頭の妊娠が確認できた。次年度には出生する個体のジェノタイピングによりゲノム編集の成否の評価や、出生個体の成長特性、繁殖機能評価などを実施する予定である。以上より、ヤギにおけるゲノム編集技術の確立についてはおおむね順調に推移したと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、1細胞期受精卵におけるゲノム編集技術による相同組み換えを利用してキスペプチン遺伝子にloxP配列を配置した外来遺伝子をヤギ受精卵に導入し、遺伝子ノックイン胚を受胚雌ヤギに移植してゲノム編集ヤギ(Kiss1-floxedヤギ)を作出することをめざしている。さらに、キスペプチン遺伝子を発現する脳内局所に、Creリコンビナーゼ遺伝子を搭載した組換えアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-Cre)を直接注入し、Cre/loxPシステムによりコンディショナルにキスペプチン遺伝子をノックアウトして卵胞嚢腫モデルヤギを確立することをめざしている。一連の本研究により、ヤギ1細胞期受精卵採取を可能とする生殖工学技術や、1細胞期受精卵におけるゲノム編集技術、全身性キスペプチン遺伝子ノックアウトヤギの作出は確立されつつあり、今後は卵胞嚢腫モデルヤギの確立をめざす。 全身性キスペプチン遺伝子ノックアウトヤギについては、作出個体のゲノム編集の成否の評価や、出生個体の成長特性、繁殖機能評価などの実験が進行中であり、次年度への繰越額はこれらの継続実験における必要資材の購入経費として使用する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、ヤギ1細胞期受精卵におけるゲノム編集により、キスペプチン遺伝子を全身性にノックアウトしたゲノム編集ヤギの作出技術の確立と検証に取り組み、特に、エレクトロポレーション条件の最適化や高いゲノム編集率を得る手法の確立に主眼をおいて研究を実施したことから、遺伝子関連実験用試薬や一般実験消耗品類の購入費が予想以上に少なくなったため、次年度使用額として約87万円を計上することとなった。 令和4年度は、ゲノム編集胚の移植によって得られる個体のジェノタイピングによるゲノム編集の成否の評価や、出生個体の成長特性、繁殖機能評価などに最優先に取り組み、これまで報告のないキスペプチン遺伝子が全身性にノックアウトされたゲノム編集ヤギの作出をめざす。令和4年度に請求予定の次年度使用額とあわせた学術研究助成基金助成金約197万円は、今後取り組む遺伝子実験・細胞生物学実験用試薬類、プラスチック消耗品類、ラジオアイソトープなどの実験用資材・消耗品の調達に使用し、本研究計画を円滑に推進するために有効に活用する計画である。
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