生体でのプロテインノックダウンは,2022年に我々のグループを含めたマウス生体への実装例3例が初めて報告され,現在も世界的に改良が進められており,将来的に広く使用される技術になると考えられる。我々は現在,サリドマイドアナログを用いた簡便なプロテインノックダウン法の開発を目指している。これまで,サリドマイド誘導体は,マウス細胞においてはネオリガンド分解活性を持たないと考えられてきたため,我々はCRBNをヒト化したマウスをゲノム編集により作製し,EGFP-デグロンタグ誘導体の蛍光強度を測定することでプロテインノックダウン効率を評価した。しかしながら,野生型マウス細胞においてもネオリガンドのプロテインノックダウンが起こることを見出した。また,複数の培養細胞株を用いた実験によって,未分化な細胞株では,より活性が高いことが示唆された。このタンパク質ノックダウンシステムをマウス生体における内在性PD-1に適用したところ,T細胞におけるPD-1の発現抑制,および,マウスに移植されたがん細胞株の増殖抑制に成功した。また,他の細胞表面マーカーの発現抑制にも成功したので,広く使用できる技術であると考えられた。当初問題となったタグを付加することで起こるリークが抑制できるようになったので,現在,組織および細胞特異的ノックダウン細胞およびマウスの作製を進めている。
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