クリプトスポリジウム原虫は、全世界的において、感染した子牛に難治性、致死性の下痢症を引き起こす。生産現場では、未だ有効な防除法が見出せていない。感染に耐過した子牛は再感染に抵抗を示すことから、防除はワクチンによる免疫付与が有効である。本研究課題では、クリプトスポリジウム原虫の他種動物への寄生適応現象に焦点をあて、他種動物による継代を行い、本来の宿主に対して寄生性が低下した原虫株を非遺伝子改変により作出し、安全な弱毒誘導型生ワクチンの創出に挑戦する。本年度は、牛由来株のクリプトスポリジウムを免疫不全マウスに感染させ、これを回収し、これを10代行った。その結果、プレパテントピリオドが早まり、糞便中の排出量もログレベルで増加した。これにより、牛由来株のマウスへの適応が示唆された。本10代継代株については、ゲノムDNAを抽出し、全ゲノム解析を終了した。また、リファレンス株として、マウスにおいて長期間継代を行っている国内のウシ型の人由来株についてもゲノム解析を実施し、さらにマウスへの少数投与による増幅を試みた。その結果、最少オーシスト数5個で感染が成立し、ゲノム解析に供することができるオーシスト数を得ることができた。現在、これについてゲノム解析を進めている。また、3つの株価細胞でのクリプトスポリジウムでのin vitro 培養も試みた。その結果、48時間まではメロント数の増加が認められたが、これ以後は減少に転じた。
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