研究課題/領域番号 |
21K19198
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
藤原 祥高 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (70578848)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 診断マーカー / 雄性不妊 / 哺乳類精子 / 小分子化合物 |
研究実績の概要 |
本課題では、代表者らが発見した「見かけ正常な受精不全精子」を簡便に検出する診断マーカーの開発、in vitro添加による精子受精能力改善法の確立、そして小分子化合物による可逆的な精子受精能阻害剤の開発の3つの研究を進めている。
今年度は、新たに診断マーカー候補となりうる精子膜タンパク質を複数発見し、そのひとつであるSPACA4について報告することができた(PNAS. 2021)。このSPACA4は受精ステップの中でも、精子の透明帯通過に機能することから良い診断マーカー候補として考えられる。その理由は、マウス精子に対して非常に良い特異性と反応性を示すモノクローナル抗体の作製に成功したからである。次年度は、マウス以外の哺乳類(ヒト、家畜等)精子での検討を計画している。
現在解析中の精子膜タンパク質のKOマウスは、精子が雌の子宮から卵管へと移行することができずに不妊になることを発見したので、抗体作製など詳細な解析を進めて診断マーカーの可能性を模索したい。また、既報の因子についても精子の免疫染色等の検出法を試したが、良い結果は得られなかった。引き続き、局在を調べるためにタグや蛍光タンパク質を導入したマウス系統の作出を進めている。残念ながら、候補から漏れてしまった因子についても結果はネガティブでも有益な情報と考え報告した(Asian J Androl. 2021)。並行して、精子機能を制御する可能性を秘めた小分子化合物の探索も順調に進んでいるが、国際共同研究先とのプロジェクトのため、未発表段階での詳細については避けたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、新たな診断マーカー候補(SPACA4)の発見に成功し、小分子化合物のスクリーニングも順調に進んでいる。また、作製した抗SPACA4抗体は生きたマウス精子でも高い反応性を示すことから本研究目的の達成に貢献できる可能性が高い。以上より、進捗状況は概ね順調と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、絞り込んだ小分子化合物を用いて精子受精能力の可逆的変化の検討を個体レベルで行う。また、体外培養した受精不全精子に対して、酵素添加により受精能力の改善を試みる実験にもトライしたい。マウス以外にヒトや家畜の精子を用いることで、哺乳類に共通する診断マーカーの開発が雄性不妊の診断・検査への利用を目指す。そして、初年度に引き続き、新たに発見した精子受精能力に必須な膜タンパク質の解析を通して診断マーカーの候補探索を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今般の新型コロナウイルス感染症の影響で、当初予定していた学会発表等の国内出張と研究材料として調達予定だったヒト及び家畜精子の現地採取や共同研究先での実験を全て取りやめたため、次年度使用額が生じてしまった。次年度は、本年1月から雇用した非常勤研究員を動員して効率良く研究を推進し、研究期間内に目標達成に努めたい。
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