本年度は、遺伝子転写による複製への影響をより高精度に解析をおこなうため、期間を延長して研究を実施した。2022年度の研究から、遺伝子領域内で転写機構がDNAポリメラーゼの機能に影響を及ぼすことが示されたが、本年度は、ヒトゲノム上で特に、この影響が大きい領域の探索を行った。その結果、ゲノム上に数ある染色体脆弱部位(Common Fragile site)のうち、最も不安定な領域であるFRA3BやFRA16Dにおいて、リーディング鎖合成を担うPolεの機能が低下することが示された。 FRA3BやFRA16D領域には長い遺伝子(それぞれFHIT、WWOX)が存在するが、同様に傾向がその他の長い遺伝子の近傍(150kb-1。5Mb)において示された。これらのことから、長い遺伝子の領域内では、転写と複製フォークが干渉する頻度が高く、フォークの進行に付随したリーディング鎖合成へ影響を及ぼしたと考えられる。
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