研究課題
昨年度、われわれは、アーキア由来のFe-Sクラスター生合成系(SUFマシナリーのプロトタイプ)を酵母のサイトゾルで発現させることによって、ミトコンドリアISCマシナリーの必須成分であるNFS1の遺伝子を初めて破壊することに成功した。また、その破壊株の表現型から、ミトコンドリア内のFe-Sタンパク質群(電子伝達系やグルタミン酸合成酵素など)は機能していないが、サイトゾルや核のFe-Sタンパク質群は正常と推定された。したがって、ISCマシナリーの役割の中で酵母の生存に必須な機能(ミトコンドリアからサイトゾルへのFe-Sクラスターの供給)を、サイトゾルで発現させたSUFマシナリーによってバイパスすることができたと考えられる。酵母のミトコンドリアにおける唯一の必須機能はISCマシナリーとされている。とすると、導入したSUFマシナリーがサイトゾルで機能していれば、ミトコンドリア全体が無くても生育できる可能性がある。ミトコンドリアタンパク質の99%は核にコードされ、サイトゾルで前駆体タンパク質として合成された後に、ミトコンドリア内に輸送されることが知られている。そこで、輸送経路で中心的な役割を果たしているTIM23の遺伝子を破壊させることができれば、ミトコンドリアはいずれもぬけの殻となり、最終的にミトコンドリアそのものを欠失できるのではないかと考え、本年度は、TIM23遺伝子の破壊に挑戦した。酵母のサイトゾルでSUFマシナリーのプロトタイプを発現させたのち、TIM23遺伝子をジェネティシン 耐性遺伝子で置換するように形質転換を行ったところ、小さなコロニーが多数出現し、その多くでTIM23遺伝子が破壊されていることをコロニーPCRで確認することができた。しかし、それらのコロニーは全て、植継ぐと生育することができなかった。種々の要因を検討したが、現在まで成功していない。
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10.1101/2024.03.20.586028