研究実績の概要 |
当研究室では共同研究を通じて、選択的オートファジーの基質である、Ape1複合体が液-液相分離により形成される構造体であることを示した(Yamasaki et al., Mol. Cell, 2020)。また我々は最近になって、Ape1にGFPを融合することで高温培養条件下の液-液相分離が阻害され、Ape1複合体形成が不能となる現象を見いだした(Suzuki and Hirata, FEBS Lett., 2023)。本研究課題では、GFPを融合するとタンパク質の活性が温度感受性になる現象が他のタンパク質にも適用可能であることを調べることを目的としている。 出芽酵母の生育に必須な遺伝子を破壊すると致死となる。こうした遺伝子は“必須遺伝子”と呼ばれる。私はApe1の場合と同様に、必須遺伝子にコードされたタンパク質にGFPを融合すると、高温条件下で相分離が起こらなくなり、活性を失う、つまり致死となる可能性を想定した。出芽酵母では、各遺伝子がコードするタンパク質のC末端にGFPを融合した4,100種類余りの株のコレクションが存在する。本研究課題では、これらの株を寒天培地にて培養し、高温で生育が悪くなる株をスクリーニングした。 これまでの研究で、スクリーニングが完了し、135種類の株が高温感受性の生育を示すことが明らかとなった。これら候補株に対して温度変化に対するGFP融合タンパク質の局在変化を確認したところ、いくつかの株でApe1-GFP株と同様に高温培養時に局在が消失する株が確認できた。これらの局在変化が液-液相分離の消失によるものであることを確認するために、許容温度培養中の細胞に1,6-ヘキサンジオール処理を行ったところ、ドット状の局在が消失したことから、これらのGFP融合タンパク質が液-液相分離によって形成される新規区画であることが強く示唆された。
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