研究課題/領域番号 |
21K19208
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
加納 純子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (10323809)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 染色体 / クロマチン / テロメア / サブテロメア |
研究実績の概要 |
一般的に、酵母などの真核生物の染色体は線状であり、大腸菌などの原核生物の染色体は環状である。生物界には、なぜこのような2種類の形態が存在するのだろうか?真核生物の染色体が線状である根本的な理由・利点は何だろうか? この生物の根本を問う疑問に答えるためには、同一の生物種で線状と環状の染色体をもつ細胞を比較する必要がある。単細胞真核生物である分裂酵母の染色体数は、真核生物の中で例外的に少ないため(3本)、低頻度ではあるが、大腸菌の染色体のように各染色体が「自己」環状化して安定化したサバイバー株を取得することができる。これまでに、分裂酵母細胞においてテロメア結合タンパク質Pot1を欠失させることにより、自己環状化染色体をもつ株を取得した。栄養豊富な培地における生存率を測定したところ、環状化染色体株の生存率はいずれも50%程度まで下がっていたことから、染色体が線状であることが栄養条件における正常な増殖に必要であることがわかった。次に、なぜ環状化染色体をもつ細胞は死にやすいのか?その細胞が死ぬ際、細胞内で何が起こっているのか?を明らかにするため、自己環状化染色体をもつ細胞を経時的に観察したところ、染色体分配に異常が生じ、もつれるような形態が高頻度に観察された。そこで、DNAの絡みを解くトポイソメラーゼの阻害剤で細胞を処理したところ、染色体自己環状化株は野生株と比較して高い感受性を示した。このことから、分裂酵母では染色体の絡みを解くことに問題があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自己環状化染色体をもつ細胞の表現型を着実に解析できている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、自己環状化染色体の絡みorもつれの原因を探る。大腸菌などの環状染色体はほぼ染色体分配に問題がないのに、なぜ分裂酵母であると問題が生じるのか、両者の違いは何かを探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会および国内学会についてはオンラインで開催されたものが多く、さらに本研究の解析のために使用する様々な遺伝的バックグランドをもつ染色体環状化株の取得には予想外の時間がかかったことから、翌年度に持ち越すことにした。翌年度は遅れている解析の物品費や国際、国内学会への参加費用として使用する。
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