研究課題/領域番号 |
21K19212
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
岩本 真幸 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (40452122)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | チャネル / 脂質2重膜 / 離合集散 / 電気生理 / 蛍光 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質の細胞膜上での離合集散とそれらの活性が密接に関連する可能性が示唆されている。その一方、膜タンパク質の集合状態、すなわち、膜内2次元密度を実験上制御することは難しく、密度と活性の関係は未だ定量されていない。本研究では、独自の人工細胞膜実験技術(CBB法)を基に、膜タンパク質2次元密度制御の基盤実験技術を確立し(①)、イオンチャネル研究を通して応用可能性を実証する(②)。 今年度は特に①に注力した。CBB法ではリン脂質単分子膜を纏った油中水滴同士の接触面に脂質2重膜を形成させる。よって、油中水滴間距離により接触面積(脂質2重膜面積)を制御できる。我々は、上記操作による膜面積の変化に連動させ、組み込まれた膜タンパク質の2次元密度を制御できると予想している。この点を確認するため、脂質2重膜にAlexa532で蛍光標識した膜タンパク質・KcsAカリウムイオンチャネルを組み込み、膜上での挙動を観察した。膜に組み込まれた分子だけを観察するために、全反射蛍光(TIRF)観察を行った。TIRF観察では、カバーガラス表面のごく近傍に脂質2重膜を作成する必要がある。まずカバーガラス表面にハイドロゲル薄膜を作成し、その上にリン脂質が溶解したオイルを添加することで、ハイドロゲルとオイルの界面にリン脂質単分子膜を形成させた。オイル層に蛍光標識KcsAを再構成したリポソーム懸濁液を滴下し、油中水滴とした。油中水滴の表面にはリン脂質単分子膜が形成するので、ゲル表面の単分子膜と接触させることで接触面に脂質2重膜を形成させた。ここで、油中水滴中のKcsAは膜融合によりハイドロゲル上の脂質2重膜に組み込まれると考えられ、KcsA単分子に由来する輝点を多数観測することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始直後に購入した高感度顕微鏡カメラの納入が遅れ(昨今の半導体不足の影響による)、蛍光観察実験の開始が予定よりも遅くなった。
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今後の研究の推進方策 |
脂質2重膜面積を制御しながらKcsA単分子の挙動を蛍光観察する実験を進め、膜タンパク質の2次元密度制御法の確立に向けて一定の成果を目指す。また、2次元密度と活性の関係をKcsA単分子レベルで検討する実験を開始する。この実験では、2次元密度のみに関与する不活性のKcsAを膜上に大量に存在させる。不活性体の候補となるKcsA変異体を作製し、機能解析(電気生理測定)によって活性が無いことを確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会、研究会がオンラインとなり、予定していた旅費を支出しなかったため。
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