研究課題/領域番号 |
21K19215
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大嶋 篤典 名古屋大学, 細胞生理学研究センター, 教授 (80456847)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | large pore channel / 脂質膜再構成 / クライオ電子顕微鏡 / 開閉メカニズム / 試料調製 |
研究実績の概要 |
膜タンパク質チャネルを生体内に近い環境で構造解析することを目指して、ナノディスクやリポソームを用いた膜タンパク質の再構成技術を適用している。具体的にはLarge pore channelとして知られるヒトpannexin(Panx)チャネルのクライオ電子顕微鏡構造解析を行っている。これまでにpannexin-1(Panx1)の野生型Pチャネルのオープン状態とクローズ状態の構造解析、および、N末端欠失変異体とC末端欠失変異体の構造解析をいずれもナノディスク再構成状態で成功している。野生型の閉塞構造とN末端欠失変異体の構造はチャネル通路の内側に通路を塞ぐ密度が現れて、脂質のアシル鎖の特徴を示す密度が確認され、脂質がチャネルの内側に入り込むことを示唆するものであった。Panx1チャネルの機能解析とMDシミュレーションを用いた脂質の流動性の解析を共同研究にて行い、これらを総合して、脂質がPANX1と相互作用しながらチャネル通路内へ移動する「脂質ゲーティングモデル」を提示した。Panx1のリポソーム膜再構成にも取り組んでいる。また、骨芽細胞の分化に関わると言われるpannexin-3(Panx3)の構造解析にも取り組んでいる。Panx3についても脂質膜に再構成した状態での構造解析を行うため、ナノディスク再構成とリポソーム再構成を試みている。当該年度ではPanx3の精製とナノディスク再構成を負染色電子顕微鏡観察で確認した。現在、グリッド凍結条件の検討を行っており、クライオ電子顕微鏡による高分解能構造解析を目指している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はPanx1のリポソーム再構成を行った。Panx1の発現と精製は再現性良くできていたが、リポソーム再構成は負染色電子顕微鏡観察およびクライオ電子顕微鏡観察の両方において裏付けとなるデータを得るには至らなかった。そこで、対象タンパク質をPanx3に変更し、脂質膜への再構成を試みた。リポソーム再構成はPanx1と同様に負染色電子顕微鏡観察で再構成の確認が困難であったため、ナノディスク再構成を行ったところ、再現性良く粒子を負染色電子顕微鏡観察で確認した。当初はC末端領域にGFP-8Hisのタグが付加したPanx3を発現に用いていたが、GFP-8Hisタグを切断したにもかかわらず、クライオ電子顕微鏡ではPanx3/nanodiscの粒子がつぶれて変性した像ばかりとなった。そこで、C末端領域に付加するタグを6xHisタグのみに変更して精製したPanx3を使用したところ、Panx3/nanodiscの粒子が凍結後のクライオ電顕試料においても崩壊することはなかった。現在はこの試料を用いてクライオ電子顕微鏡像の大量データ収集を行っており、高分解能構造解析の期待できる像が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
Panx3/nanodiscのクライオ電子顕微鏡構造解析を行う。C末端領域の精製用タグをGFP-8Hisから6xHisに変更したことによってPanx3の安定性が向上し、ナノディスク再構成後にクライオ電子顕微鏡用の凍結試料作製の際に変性にしにくくなった。この試料を用いてグリッド凍結条件を検討している。より薄い氷の試料を作製するためにグリッドの材質をモリブデン、銅、金など複数試してクライオ電顕のデータ収集を行う。画像解析はcryoSPARCとRelion5.0を用いて行う。Panx3の機能解析は渡邉先生(大阪大学)との共同研究によって電気生理学的手法を用いて行う。脂質ゲーティング機構がPanx3においても主張できることができれば、Large pore channelにおける開閉機構の一般性をさらに強く訴えることが可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Panx3のナノディスク再構成に成功し、構造解析の見込みが立ったため。 Panx3のクライオ電顕構造解析を行い、その開閉機構における脂質の役割を解明する。
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