研究課題/領域番号 |
21K19219
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
三好 知一郎 京都大学, 生命科学研究科, 准教授 (60378841)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | Alu / レトロトランスポゾン / 転移 / LINE-1 / ゲノム |
研究実績の概要 |
現在Aluの転移をモニターするレポーターコンストラクトは、G418耐性遺伝子ただ1種類しか存在しない。このためコロニー形成能の低い細胞株や既に遺伝子改変によりG418耐性となっている細胞株についてはAluの転移を観察することができない。そこでAluの転移アッセイをより多くの細胞株に適用し、かつその制御因子を広範に探索するための遺伝学スクリーニングへと発展させるために、これを蛍光タンパク質によって可視化する手法の開発に取り組んだ。本年度ではEGFPをAluの転移レポーターとするベクターを新規に作成した。レポーター遺伝子内の様々な部位に自己スプライシングイントロンを挿入して、Aluの転移が生じてはじめてEGFPが発現する細工を施した。興味深いことに、このAlu-EGFPコンストラクトをRNA polymerase IIによって転写させても自己スプライシングはほとんど起こらなかったが、RNA polymerase IIIによって転写させたところ高効率で自己スプライシングが観察された。Alu本来はRNA polymerase IIIによって転写されるため、これらは有望な新規転移レポーターとなりうる可能性が高い。実際これをAluの転移アッセイに用いた予備実験から、転移を可視化することができたため、多くの細胞株に用いることができる汎用ベクターと組み合わせることで実用化する目処が立った。 さらにその転移を実行する逆転写酵素ORF2pの質量分析結果を実施し、様々な宿主相互作用因子を同定した。現在これらの因子がどのような機能を担う因子なのか、GO解析などを用いたグループ分けなどを行い、候補因子群の選定に向けた準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Alu転移を許容する細胞株を用いて、その転移を実行する逆転写酵素ORF2pの質量分析結果を取得したことに加えて、Aluの転移をモニターする新たなレポーターコンストラクトを構築しつつある。後者は蛍光タンパク質を利用しているため、Aluの転移を可視化またはFACSなどによってソーティングする技術基盤につながる。これによりAlu制御因子の網羅的スクリーニングを当初の計画より早く実施することを見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
まず質量分析で同定されたORF2p相互作用因子を機能的な違いによってクラス分けを行い、どのような経路に関わる因子が相互作用するのか解析を進め、候補因子を選別する。ただし対象は膨大であり、決め打ちとなる選び方だけでは効率が悪いため、Alu転移をGFPによってモニターする系の確立を目指す。次にこれを用いてAlu転移に関与する遺伝子をハイスループットスクリーニングによって特定する準備を開始する。その後、生化学と遺伝学から得られた双方のデータを比較検することによって、解析すべき因子・複合体の選定・解析作業へと移行する。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度使用予定として購入を計画していた合成オリゴが、合成が困難な配列設計であったため、納期が年度内に間に合わない可能性が生じたので、これを次年度初期に発注することとし、その分の予算を繰り越す必要があったため。
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