研究実績の概要 |
合成生物学の大きな目的の一つに、設計された生合成遺伝子クラスターを用いて代謝経路を最適化し、生産物の収量の向上や新しい代謝産物を合成させることが挙げられる。現在の長鎖DNA合成法はPCRを基盤技術とするPCA(Polymerase Cycling Assembly)法であるが、PCRではわずか数百 bp でも増幅できない配列や、長鎖に挿入されるエラー頻度、エラーの修正にかかる時間といった問題を抱えており、この問題を解決しない限り、DBTL(design-build-test-learn) サイクルの機動性は向上しない。 そこで本研究では、上述の問題解決のため、PCR 増幅を除外した酵素法の新規手法の考案が必要と考え、リガーゼを基盤とする DNA合成法 Circular Assembling into Ordered Sequence (CAIOS)法を提案し、その機動性を評価することを目的としている。 令和3年度は、オリゴDNAを4本から10本程度まで目的の配列に連結することを確認した。また、1st CAIOSで得た300-merのコアオリゴ4本を、2nd CAIOSで1.2 kbpの二本鎖DNAの合成に成功した。DNAポリメラーゼが滑りを起こす配列を見いだし、部分書き換えは1日で達成し、高速・簡便であることも証明した。令和4年度は、異なる配列の酵素を使用し、ネイティブ配列と最頻度コドン書き換え配列を合成した。その発現をin vitro, in vivoで確認し、発現量のみならず、比活性でも差があるかどうかを確認した。以上の結果から、CAIOS法は、任意の配列を迅速に合成する機動性に優れ、数キロbpの遺伝子合成は2ndCAIOSまでで十分対応できることが示された。
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