新しいタイプの光駆動性イオンチャネルおよび光駆動性膜機能蛋白質を創製することを目的とする。光異性化を起こすアゾベンゼンを利用して、光によるイオンチャネル活性の制御を行う。分子構造や動作機構に立脚して戦略的に光駆動性チャネル・光駆動性膜蛋白を創製するプラットフォームを構築する。 これまで、AlphaFold2による構造予測から、細胞外領域が殆どなくゲートに関係する膜貫通領域がカルボキシ端終末であり人工チャネルのテンプレートとして使いやすいことが期待されたBmGr9チャネルおよび、最小の電位センサーチャネルであるHvチャネルを対象に実験を進めた。構造予測をもとに光異性化距離に相当する残基ペアにCys変異を導入するアイデアで網羅的に多くの変異体コンストラクトを作成し、変異体チャネルをXenopus卵母細胞に発現させ、アゾベンゼン誘導体をスルフヒドリル反応で付加し、光異性化波長を照射し、電気生理学的に測定した。Hv電位センサーを光で操作するチャネルを得ることは出来なかったが、多くの光駆動BmGr9チャネルを手に入れた。さらに、アゾベンゼン誘導体の種類・長さを変えた実験を行い、適切な残基間架橋距離を見出した。電気生理学実験システムをプログラムした波長で自動で照射できる機器を組み合わせて改良を行い、実験の効率化を図った。 本年度は、出来上がった光駆動チャネルを用いて、イオンチャネルの開閉機構を検討した。実験により残基間距離を測定することができたため、その距離情報をもとに分子動力学計算により、BmGr9チャネルの定常状態の構造をシミュレーションした。多くの実験を行い光駆動実験で得られた残基間距離情報を蓄積し、それをもとに開閉ゲーティングモデルを構築した。
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