本研究課題はレンチウイルスをモデルに、1)ウイルス認識抗体FabにAirIDが融合した抗ウイルス-AirIDの構築、2)抗体-AirIDを付与されたウイルスの作製、 3)ウイルス表面タンパク質のビオチン化の検証、4)細胞への感染能の確認、5)抗体-AirID付与ウイルス感染細胞におけるビオチン化宿主タンパク質の同定、からなる5項目により技術開発を行う。 そこで本年度は、上記4)~5)の研究項目を進めた。その結果、レンチウイルスを用いて昨年度作製したレンチウイルスのエンベロープ膜タンパク質であるVSV-GをSARS-CoV-2のS タンパク質に置換したSARS-CoV2-S-レンチウイルスと、Sタンパク質を認識するモノクローナル抗体のFab遺伝子にAirIDを融合した抗SARS-CoV2-S- AirIDを研究に用いた。HEK293T細胞を用いて作製したルシフェラーゼ遺伝子を含有するARS-CoV2-S型レンチウイルスを密度勾配遠心法で単離・濃縮後、細胞への感染を試みた。その結果、ARS-CoV2-S型レンチウイルスがACE2依存的な感染能を有し、その感染能はTMPRSS2の発現により顕著に上昇した。これらの結果から、ARS-CoV2-S型レンチウイルスがSARS-CoV-2と同様なエントリー経路で感染できることを示唆している。次に、ARS-CoV2-S型レンチウイルス感染後に抗SARS-CoV2-S-AirIDを混合して、細胞抽出液からビオチン標識タンパク質をストレプトアビジンにより回収し、イムノブロッティングでの検出を試みたが、感染細胞において、ACE2やTMPRSS2のタンパク質、さらにレンチウイルス上でのSタンパク質へのビオチン標識は検出できなかった。低温やMOIなどの感染条件を検討してみたが、改善はみられなかった。おそらく、感染に必要なウイルス数がイムノブロッティングでの検出限界以下であることが主原因だと思われる。今後は、検出感度を上げるために、15 cmディッシュ20枚程度の大規模感染とACE2等の免疫沈殿を行い、さらに改善を目指す。
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