研究課題/領域番号 |
21K19231
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池ノ内 順一 九州大学, 理学研究院, 教授 (10500051)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 生体膜 / スフィンゴミエリン / コレステロール / リン脂質 / 膜流動性 |
研究実績の概要 |
生体膜は多様な脂質分子種によって構成されており、これらの脂質種が時空間的に不均一に分布することが、多様な細胞内機能に関わると考えられている。本研究課題では、この様な細胞膜脂質の多様性や、多様な脂質の混和物として形成される細胞膜の物性を可視化するツールの開発を目指している。スフィンゴ脂質やコレステロールは、秩序性の高いliquid-ordered(Lo)相を形成し、周囲のliquid-disordered(Ld)相から分離する性質があり、この相分離は膜タンパク質の分布制御にも寄与すると考えられている。形質膜はスフィンゴ脂質やコレステロールを高い割合で含むが、生細胞の形質膜の物性が不均一であるかについては、解析手法が限られるため未解明である。 生細胞の膜物性を可視化する方法に、周囲の物性に依存して異なる波長の蛍光を発する環境依存性プローブの利用が挙げられる。LipiORDERとして市販されているピレン骨格色素(PA)は、Lo相では短波長(Blue)、Ld相では長波長(Red)の蛍光を発する蛍光ソルバトクロミック色素であり、Red/Blueの比によって膜の秩序性を可視化できる。しかし、ピレン骨格色素は膜透過性が高く、小胞体や脂肪滴などに由来する強いシグナルが細胞内に観察される。そのため相対的に形質膜のシグナルが低く、形質膜における膜物性の不均一性については観察が困難であった。今年度は、ピレン骨格色素の蛍光ソルバトクロミック色素を改変し、選択的に形質膜に局在化させることによって、形質膜の膜物性の不均一性を可視化するプローブの開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピレン骨格色素の合成に長じた共同研究者(小西玄一准教授)および化学修飾についての共同研究者(松森信明教授)の協力を得て、様々な親水基を付与したピレン骨格色素の蛍光ソルバトクロミック色素を作出し、人工脂質二重膜を用いて、ソルバトクロミックな蛍光特性の変化を調べるとともに、細胞に添加した際の蛍光輝度、細胞内分布の検討を進めている。これまでに形質膜の観察に有用な候補化合物を同定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、膜の不均一性を可視化するプローブの開発を進めるとともに、形質膜の膜の流動性の局所的な違いを検出するプローブを用いて、上皮細胞の微絨毛や細胞接着装置の形成において、膜の物性の変化が観察されるか、といった細胞膜の構築における脂質の寄与を検討したい。また、上皮間葉転換など細胞の癌化に伴って、形質膜の流動性がどのように変化するかについても検討を行いたい。更には、細胞増殖因子受容体やGPCRなどの刺激によって、形質膜に一過性に形成されると考えられている脂質ラフトの観察についても取り組みたい。
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