研究課題
ヒトゲノムのわずか約2%にのみ蛋白質コード領域が存在する一方、ヒトゲノムの50%以上から転写物が見られ、蛋白質をコードしない転写物は総称して非コードRNAと呼ばれている。非コードRNAの中には、サイレンシング、転写活性化などの遺伝子発現の各段階に影響を与える分子が知られているが、ほとんどのゲノム領域に見られる非コードRNAの機能は不明のままであった。また、非コードRNA発現領域と減数分裂期組換え部位の相関が指摘されるなど、非コードRNA転写と染色体機能調節の関係性が議論されている。本研究では、非コードRNA自身の機能ではなく、転写するポリメラーゼの通過に伴う染色体機能制御の可能性を示唆するパイオニアポリメラーゼ仮説「非コードRNAを転写するポリメラーゼがパイオニアとしてその通過領域のクロマチン構造を緩め、転写や組換えなどのDNAを基質とする反応の制御に寄与する」を立証し、そのメカニズムを解明する。この機構は転写物の配列に依存しない普遍的な機構である点で新規のメカニズムであると言える。今年度には、分裂酵母のfbp1遺伝子座において、代謝ストレスにより活性化する非コードRNAのmlonRNA転写により減数分裂期DNA2本鎖切断が新規に導入される現象を発見し、その形成機構を報告した(投稿中)。また、mlonRNAと同じ転写開始配列から同様の遺伝子間領域を転写する非コードRNAを発見し、この部位に減数分裂期組換えホットスポットが出現することを同定した。このことから、非コードRNAを転写しゲノム上を移行するパイオニアポリメラーゼにより、通過領域のクロマチンが開いた構造となり、近傍遺伝子の転写のみならず、その領域の組換え反応も活性化されることが示唆された。これらの事実は、配偶子形成時の環境影響による転写変動が、配偶子の多様性創出につながる組換えの可塑性につながる可能性を示している。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 3件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Scientific Reports
巻: 13 ページ: 2133-2135
10.1038/s41598-023-28742-6
Current Research in Toxicology
巻: 4 ページ: 100102~100104
10.1016/j.crtox.2022.100102
Biomolecules
巻: 12 ページ: 1642~1645
10.3390/biom12111642
巻: 12 ページ: 1716~1726
10.3390/biom12121761
Genes to Cells
巻: 27 ページ: 331~344
10.1111/gtc.12929
NAR Genom Bioinform
巻: 4 ページ: qac065
Chemical Research in Toxicology
巻: 35 ページ: 2059~2067
10.1021/acs.chemrestox.2c00213