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2021 年度 実施状況報告書

昆虫の寿命を延ばす細菌が分泌するアンチエイジング因子の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K19239
研究機関法政大学

研究代表者

大島 研郎  法政大学, 生命科学部, 教授 (00401183)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2023-03-31
キーワードファイトプラズマ / 分泌タンパク質
研究実績の概要

ファイトプラズマ(Candidatus Phytoplasma属細菌)は、植物や昆虫の細胞内に寄生する絶対寄生細菌であり、両宿主に交互に感染するホストスイッチングによって感染範囲を拡げる。植物に対しては病気を引き起こし、世界中で多くの作物に被害を与えている。一方、昆虫がファイトプラズマに感染しても病状は全く現れず、逆に寿命が延びたり、高齢になっても活発に産卵するなどの「アンチエイジング効果」が現れる。本研究では、ファイトプラズマのゲノムにコードされるタンパク質の中から老化を抑えるアンチエイジング因子を探索することを目的とする。ファイトプラズマは植物・昆虫の細胞内に寄生するため、ファイトプラズマから分泌されたタンパク質は宿主の細胞質で直接的に機能する。分泌シグナルを持つタンパク質は宿主を操作するアンチエイジング因子の最有力候補であるため、ファイトプラズマゲノム上にコードされる分泌タンパク質を探索し、その機能を解析する。令和3年度は、JHP系統のファイトプラズマの分泌タンパク質の探索を試みた。一般的に分泌タンパク質の多くはPMU(potential mobile unit)と呼ばれる遺伝子クラスターにコードされていることから、JHPゲノムに存在するPMU領域の塩基配列を解読した。PMUにコードされるtmk,tra5,dnaB,hflB,ssb遺伝子のコンセンサス配列をもとにプライマーを設計し、PMU領域をシーケンス解析したところ、計7個の分泌タンパク質を発見し、HYDE1~7と命名した。HYDE1、およびHYDE2の細胞内局在を調べるために、YFP-HYDE1、YFP-HYDE2融合タンパク質をそれぞれNicotiana benthamianaで一過的に発現させたところ、HYDE1は核と細胞質に、HYDE2はおもに細胞質に局在することが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

令和3年度は、ファイトプラズマの分泌タンパク質の塩基配列を探索し、それらの細胞内局在を調べた。ファイトプラズマは難培養性であるため、次世代シーケンサーを用いてゲノム解読しても、その多くは植物由来のDNAであり、ファイトプラズマの分泌タンパク質を効率的に探索することが困難であった。そこで分泌タンパク質の多くがPMUと呼ばれるゲノム領域にコードされることを利用して、効率的に分泌タンパク質を同定することに成功した。本成果は、ファイトプラズマの分泌タンパク質を同定するための新たな手法であり、おおむね順調に進展しているとの評価とした。

今後の研究の推進方策

ファイトプラズマは植物・昆虫の細胞内に寄生し、またペプチドグリカン等の細胞壁を持たないため、ファイトプラズマから分泌されたタンパク質は宿主の細胞質で直接的に機能する。従って、分泌シグナルを持つタンパク質は宿主を操作する因子の最有力候補である。2021年度の研究により、分泌タンパク質をコードする遺伝子を探索し、それらの細胞内局在を明らかにした。今後は、分泌タンパク質と相互作用する宿主側因子を探索することを試みる。分泌タンパク質をbaitとして用いた酵母two-hybridシステムを構築し、宿主側の因子を探索する。陽性クローンについては、蛍光タンパク質再構成法(BiFC法)を用いて結合を検証するとともに、遺伝子産物に対する抗体を作出し、免疫沈降実験によって相互作用を再確認する。

次年度使用額が生じた理由

発注した消耗品の納期が遅れ、年度内に納品されなかったため、次年度に支払うこととした。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Enrichment of phytoplasma genome DNA through a methyl-CpG binding domain-mediated method for efficient genome sequencing2021

    • 著者名/発表者名
      Nijo, T., Iwabuchi, N., Tokuda, R., Suzuki, T., Matsumoto, O., Miyazaki, A., Maejima, K., Oshima, K., Namba, S. & Yamaji, Y.
    • 雑誌名

      Journal of General Plant Pathology

      巻: 87 ページ: 154~163

    • DOI

      10.1007/s10327-021-00993-z

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Molecular biological study on the survival strategy of phytoplasma2021

    • 著者名/発表者名
      Oshima, K.
    • 雑誌名

      Journal of General Plant Pathology

      巻: 87 ページ: 403~407

    • DOI

      10.1007/s10327-021-01027-4

    • 査読あり
  • [学会発表] アジサイ葉化病ファイトプラズマの分泌タンパク質HYDE5の機能解析2022

    • 著者名/発表者名
      遠藤藍、石曽根翔子、鈴木杏奈、前島健作、山次康幸、大島研郎
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] キク緑化病ファイトプラズマの偽遺伝子PHYLBの祖先遺伝子の復元2022

    • 著者名/発表者名
      今川基、遠藤藍、前島健作、山次康幸、大島研郎
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] ファイロジェンは宿主因子の保存領域を相互作用の標的とする2022

    • 著者名/発表者名
      鈴木誠人、北沢優悟、岩渕望、松本旺樹、山本桐也、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] ファイロジェンは標的宿主因子のユビキチン非依存的なプロテアソーム分解により葉化を誘導する2022

    • 著者名/発表者名
      北沢優悟、岩渕望、松本旺樹、鈴木誠人、笹野百花、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] ファイトプラズマの葉化誘導因子ファイロジェンと2種類の宿主因子による三者複合体の検出2022

    • 著者名/発表者名
      松本旺樹、北沢優悟、岩渕望、鯉沼宏章、鈴木誠人、徳田遼佑、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      令和4年度日本植物病理学会大会
  • [学会発表] 花を葉に変える微生物ファイトプラズマはどのように宿主をあやつるのか?2022

    • 著者名/発表者名
      大島研郎
    • 学会等名
      第62回植物バイテクシンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] Review and perspective on the survival strategy of phytoplasma2021

    • 著者名/発表者名
      Oshima、K
    • 学会等名
      The 8th Meeting of the Asian Organization for Mycoplasmology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 葉化誘導能をもたないファイロジェングループと葉化誘導能を制御する1アミノ酸多型の特定2021

    • 著者名/発表者名
      松本旺樹、岩渕望、北沢優悟、鈴木拓海、鈴木誠人、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      日本マイコプラズマ学会第48回学術集会
  • [学会発表] 網羅的探索法による多様なファイロジェン遺伝子の同定2021

    • 著者名/発表者名
      岩渕望、北沢優悟、松本旺樹、鈴木拓海、鈴木寛人、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      日本マイコプラズマ学会第48回学術集会
  • [学会発表] ファイトプラズマの花器官葉化誘導因子ファイロジェンの立体構造解析2021

    • 著者名/発表者名
      北沢優悟、岩渕望、宮武秀行、徳田遼佑、鯉沼宏章、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      日本マイコプラズマ学会第48回学術集会
  • [学会発表] アジサイ葉化病ファイトプラズマHP系統のドラフトゲノム解析2021

    • 著者名/発表者名
      鈴木拓海、二條貴通、徳田遼佑、岩渕望、松本旺樹、宮﨑彰雄、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      日本マイコプラズマ学会第48回学術集会
  • [学会発表] 効率的なゲノム解読に向けたファイトプラズマDNA濃縮系の構築2021

    • 著者名/発表者名
      二條貴通、鈴木拓海、岩渕望、徳田遼佑、松本旺樹、宮﨑彰雄、前島健作、大島研郎、難波成任、山次康幸
    • 学会等名
      日本マイコプラズマ学会第48回学術集会
  • [学会発表] 植物も感染症と闘っている2021

    • 著者名/発表者名
      大島研郎
    • 学会等名
      日本マイコプラズマ学会第48回学術集会
    • 招待講演
  • [図書] 植物医科学2022

    • 著者名/発表者名
      濱本宏, 鍵和田聡, 前島健作, 難波成任, 大島研郎, 山次康幸
    • 総ページ数
      544
    • 出版者
      養賢堂
    • ISBN
      4-8425-0584-2

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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