研究課題/領域番号 |
21K19243
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
鴫 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 副ラボ長 (20392623)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2025-03-31
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キーワード | tRNA / ubiquitin / 翻訳後修飾 / 転写後修飾 |
研究実績の概要 |
好熱菌が有する原始ユビキチンタンパク質TtuBによる、tRNA硫黄塩基の生合成制御に焦点をあて、ユビキチン翻訳後修飾のもっとも古い意義を解明する。硫黄塩基の生合成系は多数の酵素群 (TtuABCD) から構成され、真核生物のユビキチンに類似したタンパク質TtuBが硫黄を運搬している。TtuBは硫黄運搬の機能に加えて、この生合成系自体を翻訳後修飾するという機能をもつことを明らかにしている。この自己修飾が翻訳後修飾のはじまりと考えられるのでこの原始的な系の機能解明を行い、さらに真核生物のより複雑なユビキチン修飾系への進化について考察する。 これまでにTtuBが翻訳後修飾 (共有結合) する、TtuA上のアミノ酸残基を複数箇所同定している。それらの酵素活性に与える影響を調べるために、これらの変異体の組換えタンパク質を大腸菌で発現精製する系を確立した。これらの変異導入箇所は酵素活性中心の近傍であるため、翻訳後修飾の有無にかかわらず、酵素活性に影響を与えることが分かった。そのため現時点では、翻訳後修飾の機能と酵素活性の機能を切り分け評価することは難しい。 またこれまで主に研究対象としてきた好熱菌 (真正細菌) 由来のTtuBは、少数の真正細菌グループにみられるユビキチン類似分子であり、真核生物のユビキチン系の祖先型と考えられる。さらに進化的な起源と機能に迫るため、より始原的な性質を保持していると考えられる、複数の古細菌のユビキチン類似分子 (TtuBホモログ) の機能解析にも着手した。これらは好熱菌TtuBに類似した硫黄転移と翻訳後修飾機能の両方を持つこと、また複数の分子による未成熟の冗長な機能分化状態であることを示唆する結果を得た(神戸大・東大等との共同研究・論文改訂中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ感染症の世界的な蔓延により消耗品等のサプライチェーンが甚大な影響をうけており、パンデミック終息後も、サプライチェーン等の社会構造変革によって、研究に必要な機器や物品の調達が大幅に遅延した。また、予定していた技術補佐員の雇用を行うことができなかった。そのため研究の進捗が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には研究実施計画に記載の内容に沿って研究を遂行する。本年度も引き続き、好熱菌TtuBの翻訳後修飾について解析を進める。細胞内での解析と試験管内反応再構成系による解析から翻訳後修飾による標的の機能制御機構を解明する。また古細菌の系についても並行して解析を進める。研究成果をとりまとめ、原著論文を執筆し公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナ感染症蔓延をうけ、世界的にサプライチェーンが変化し、実験機器類・消耗品等の在庫不足・納期遅延が断続的に起こっている。これによって実験必需品の調達が遅延し、次年度使用額が生じた。次年度は代替品の調達や実験手法の代替等も検討し、必要物品の調達し研究を進める。また、予定していた技術補佐員の雇用費用が未支出となった。技術補佐員の確保については、高額のため短期間になってはしまうが、労働者派遣会社の活用についても検討し、研究を遂行する。
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備考 |
解説記事 技術で未来拓く産総研の挑戦(303)たんぱく質の合成ー硫黄修飾が重要な役割― 鴫 直樹 日刊工業新聞 2024/03/21
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