研究課題
初年度の研究により、コオロギ報酬性社会学習は「2次条件付け仮説」で説明でき、「報酬予測誤差仮説」では説明できないことが示唆された。最終年度は、「2次条件付け仮説」の核心となるオクトパミンニューロンの働きについて解析した結果、コオロギのオクトパミンニューロンの社会学習における役割は、哺乳類の社会学習における「ミラーニューロン」の役割に類似しているとの結論が得られた。これにより昆虫と哺乳類で社会学習での「ミラー様の神経活動」に役割に共通性があることが示唆された。一方、最初期遺伝子の発現を指標とした社会学習中のオクトパミンニューロンの活動解析については、見るべき成果は得られなかった。次に、同種の死体に対する忌避性社会学習のそのメカニズムについての実験を行った。種々の実験により、この忌避性社会学習は「2次条件付け」ではなく、「1次条件付け」により説明できることが分かった。そこではドーパミンニューロンが忌避情報を担っていた。この学習が忌避刺激の「予測誤差仮説」で説明できるかについては、結論が得られなかった。一方、本研究により、昆虫の同種他個体の認知過程には、通常の感覚刺激の認知過程とは大きな相違点があるという興味深い事実が明らかになった。その解明は次の研究課題となりうる。そこで同種他個体認知についての実験系として近年解析が進展しているゴキブリの性フェロモン受容系を採用し、性フェロモン受容体の同定や近縁種間での性フェロモン交差反応の解析などを行った。そこで得られた成果には、社会学習における同種他個体認知についての理解の助けになるものがあった。
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PNAS
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iScience
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https://www.sci.hokudai.ac.jp/~mizunami/MICROB~2/