研究課題/領域番号 |
21K19246
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中川 真一 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50324679)
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研究分担者 |
泊 幸秀 東京大学, 定量生命科学研究所, 教授 (90447368)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 超天然変性タンパク質 / 天然変性領域 / 相分離 |
研究実績の概要 |
本研究は全長に渡って天然変性領域を持つ超天然変性タンパク質に注目し、その変異体を作製することで、機能未知の超天然変性タンパク質の生理機能を明らかにすることを目的としている。これまでの研究によって、病原性の凝集体形成を阻害したりタンパク質を変性から保護する活性を持つ超天然変性タンパク質が少なくとも6種類あることが明らかとなっていた。そこでこれらの遺伝子全てについてゲノム編集マウスを作製したところ、Hero11とHero45の二種類の遺伝子のホモ個体の生体は観察されず、胎生致死になることが予想された。さらに詳細な解析を行ったところ、Hero11は胎生5.5日目から7.5日目の間に、Hero45は胎生14日目以降に致死になることが明らかとなった。また、Hero11のノックアウトマウスから樹立したES細胞は野生型のES細胞に比べて増殖が大きく低下することが明らかとなった。さらに、Hero45のメスのヘテロマウスは、交尾をして妊娠しても正常に出産できない個体が頻繁に見られることが分かった。 Hero11とHero45の分子動作機構を明らかにするために、これらのタンパク質にタグを付けた分子を培養細胞に発現させたところ、Hero11は核に局在し、核小体に特に濃縮すること、Hero45は主として細胞質に局在することが明らかとなった。また、Hero11がタンパク質の凝集体形成を抑制する際に、その細胞内局在が変化することも明らかとなった。 これらに加え、小胞体に局在し、細胞内ドメインが天然変性領域からなる機能未知タンパク質UGS148についても変異マウスを作製し、その表現型解析を行った。その結果、UGS148は間脳脳室腹側に存在するタニサイト細胞の小胞体に特異的に分布するほかオレキシンニューロンにも強い発現が見られること、しかしながらノックアウトマウスは大きな異常を示さないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
超天然変性タンパク質Heroファミリーについて、これまでに同定されているものについては全て変異体を作製し、その表現型を解析することができた。その結果、Hero11とHero45が胎生致死になることが明らかとなった。また、これらのタンパク質の局在についても予想外の興味深い結果が得られており、Heroタンパク質の作用機序に関して重要な手がかりが得られた。
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今後の研究の推進方策 |
Hero11とHero45についての表現型解析をさらに進めてゆくほか、分子レベルでの作用機序を明らかにすることを試みる。Hero11に関してはノックアウトマウス由来のES細胞が増殖低下を示すことが明らかとなっているので、Hero11の各種変異体を導入し、この表現型をレスキューできるかどうかを解析することで、分子機能に重要なドメインもしくはアミノ酸の同定を試みる。また、Hero11のES細胞で具体的にどのような異常が起きているのかを明らかにするために、核小体タンパク質を始めとする各種マーカータンパク質の発現を調べるほか、細胞にストレスをかけたときにそれらのタンパク質の局在に野生型とノックアウトES細胞で違いが見られるかを明らかにする。 Hero45に関しては、ヘテロマウスのメス個体の多くが妊娠するものの出産できないため、人工授精と胚移植を行って、致死になる時期の正確な同定を試みる。また、胎生14日目杯のノックアウトマウスからマウス胚線維芽細胞(MEF)を作製し、その増殖やストレス耐性に異常が見られるかどうかも調べる。何かしらの異常が見られた場合には、各種マーカータンパク質の局在変化を調べるほか、細胞の可溶性・不溶性画分のプロテオミクス解析を行い、タンパク質の異常な凝集が起きているかどうかを調べる。Hero11ノックアウトES細胞についても同様の解析を行う。
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