張力の負荷によって蛍光を失うGFP変異体を得るため、昨年度より継続してGFP変異体ライブラリーの温度感受性による一次スクリーニングを行った。GFPは80度以上で蛍光を失うのに対して、現在までに、65度から70度の間で蛍光を失う変異体を7種類を得た。しかし、動物細胞においてテンションセンサープローブとしての機能をもつものは得られなかった。テンションセンサープローブとして機能するためには、65度以下で蛍光が消失する構造的な不安定さが必要であると考えられた。また、細胞が発する収縮力や作用している張力をSoloの局在変化から可視化できるかを検討した。そのため、昨年度までに作製した培養細胞へ張力を負荷するツールである、ラパマイシンの添加で収縮するイヌ腎上皮MDCK細胞(収縮細胞)を用いてYFP-Soloを発現するMDCK細胞の引張刺激を行った。Soloは、ラパマイシンの添加後約30分以降の収縮細胞の収縮が終了した後に細胞間接着部位へ集積する傾向が見られた。予想される細胞への張力負荷の変化とSoloの局在変化はタイムラグがあり、このSoloの局在変化は張力の負荷による2次的な細胞構造の変化に依存していることが推測された。一方、蛍光色素とクエンチャーを付加したDNAを用いて細胞-基質間接着に負荷される張力を可視化するフォースセンサを情報通信研究機構・主任研究員の岩城光宏博士との共同研究により導入し、細胞-基質間接着部位における張力の発生部位を可視化できる方法を確立した。これにより細胞内の張力発生部位を可視化し、その部位の近傍の細胞内構造に局在する蛋白質、すなわち、細胞内での張力、又は、収縮力の発生部位を可視化するマーカー蛋白質の探索が可能となった。
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