研究課題
研究協力者の友井 拓実 博士(宇都宮大学)、坂本 丞 博士(基礎生物学研究所、現生命創成探究センター)、研究分担者の亀井らと共同で、コケ植物ヒメツリガネゴケにIR-LEGOを適用する研究を進めた。熱応答性プロモーターの下流に蛍光タンパク質遺伝子をつないで導入したヒメツリガネゴケ形質転換株の細胞に対して、レーザーパワーや照射時間について複数の条件で赤外レーザーを照射し、蛍光タンパク質の発現と細胞の状態や成長について経時的イメージングを行った。その結果、遺伝子発現を誘導しつつ細胞へのダメージがほとんど観察されないIR-LEGOの赤外レーザー照射条件を明らかにした。さらに、蛍光タンパク質の発現を指標として、単一の細胞への加温に対する熱応答性プロモーターによる遺伝子発現誘導を数理的にモデル化することに成功した。これらの結果は、ホログラフィックIR-LEGOによって複数の細胞に遺伝子発現を誘導する際のレーザー照射条件の決定に必要不可欠な知見を提供すると考えられる。また、坂本博士との共同研究によって自作のIR-LEGOを研究室に構築し、ヒメツリガネゴケにおける蛍光タンパク質の発現誘導に成功した。このIR-LEGOをベースにホログラフィックIR-LEGOを構築する研究を長谷川 智士博士、早崎 芳夫博士(宇都宮大学)と進めている。IR-LEGOによる細胞操作のモデルケースとして、任意の分化細胞に幹細胞化遺伝子の発現を誘導し、幹細胞化を引き起こすことを試みた。植物体全体を繰り返し加温することで分化細胞の幹細胞化を誘導できた一方で、一度の赤外レーザー照射では幹細胞化を誘導できなかったことから、幹細胞化の誘導には同じ細胞に対して複数回の赤外レーザー照射が必要であると考えられた。本研究の目標達成のためにも、効率的、継続的かつ低侵襲に遺伝子発現を誘導できる複数回の赤外レーザー照射条件の検討が必要である可能性が示唆された。
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Frontiers in Plant Science
巻: In press ページ: -
10.3389/fpls.2023.1171531