研究課題/領域番号 |
21K19252
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
豊島 陽子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (40158043)
|
研究分担者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00453499)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | 繊毛虫 / 繊毛運動 / 3次元位置計測 |
研究実績の概要 |
繊毛虫であるテトラヒメナやゾウリムシは、水中で3次元的に遊泳するが、その詳細は明らかになっていなかった。従来の光学顕微鏡を用いた遊泳個体の観察により得られる遊泳軌跡の2次元平面への投影像から、繊毛虫が螺旋遊泳をすることは報告されている。しかしながら、細胞体が小さく透明であるうえに遊泳が速く、錯視によって立体的な位置情報を得るのが難しいために、遊泳の螺旋方向や細胞自体の回転(自転)方向に関する定量的は報告が皆無であった。本年度は、モータータンパク質等の運動の3次元空間での振る舞いを定量することを主目的として開発された3次元位置検出光学顕微技術を、体長が50~300マイクロメートルある細胞体の遊泳の3次元空間での振る舞いを定量するように適用するため、(1)低倍率の適切な対物レンズを選択、(2)サブミリメートル範囲での3次元(主に光軸方向)位置情報の校正に使用する蛍光ビーズをアガロースゲル内に封入した状態で計測するように変更した。追跡マーカーとしては、繊毛虫細胞内に取り込ませた蛍光ビーズを用い、個体の螺旋遊泳の回転方を及び個体の自転方向を定量した。定量の結果、個体の3次元遊泳の詳細が明らかになり、Tetrahymena Thermophila やTetrahymena Pyriformisでは右螺旋を描くように遊泳し、個体の自転方向も同じ右回転であることが初めて明らかとなり、角速度などの遊泳パラメーターも決定した。別種繊毛虫である複数のゾウリムシでも螺旋方向を決定した。加えて、繊毛打が逆転するような脱分極性のCa2+刺激を与えて変化した遊泳バターンの3次元定量を行うと、後進性の右螺旋遊泳や前進性の左螺旋遊泳といった特殊な遊泳バターンを初めて見出した。これらの研究成果を、Communications Biology誌で公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題の一つである繊毛虫の遊泳の高い空間・時間分解能での3次元計測が実現可能となり、さらに、Ca2+刺激を与えて変化する際の個体の3次元遊泳パターンを定量することができ、従来観察ができなかった螺旋方向までを決定することができ一定の成果が得られ、国際科学誌Communications Biologyに公開することができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
生きたままの繊毛虫の繊毛一本の運動の3次元的な振る舞いの定量を、共焦点顕微ユニットを統合した3次元位置検出光学顕微技術を確立して実施する。個体の3次元遊泳や繊毛の3次波形を変化させるため、(1)Ca2+刺激に応答するDoping細胞個体、(2)繊毛打波形が変わるような変異株個体の作成を行い、その個体の遊泳と繊毛の波形の3次元定量を実施する。また、技術補佐員を雇用し、繊毛運動の動力源である軸糸ダイニンの自転特性の定量をすすめる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
なにぬねのなにぬねのなにぬねの
|