研究課題
哺乳類では、睡眠・覚醒は約24時間ごとに繰り返され、この24時間周期のリズムを「概日リズム」と呼ぶ。また、脳内視床下部の「視交叉上核」が概日時計の中枢として生体機能の時間的統合を行う (Ono et al., 2013 Nature Communications.; Ono et al., 2016 Science Advances)。概日時計の中枢である視交叉上核から、睡眠・覚醒の行動への出力を考えた際、昼行性・夜行性動物では行動の時間帯が昼夜逆転しているにも関わらず、視交叉上核の神経活動は、同じように昼間に高まる事が知られている。つまり視交叉上核は、24時間のリズムを刻むペースメーカーとして機能し、その時間情報は脳内の神経回路を介して、昼夜反転することで、睡眠・覚醒のタイミングが調節されていると推測される。しかし、時刻情報変換に関わる神経回路は未同定のまま今日に至っている。申請者はこの問題に取り組み、視交叉上核の出力経路の探索を進めてきた (Ono et al., 2019 Commun. Biol.,)。その結果、視交叉上核のGABAが、室傍核CRF神経を昼間に抑制する事で、覚醒を調節している事を発見した (Ono et al., 2020 Science Advances)。本研究提案では、様々な光イメージングツールを組み合わせることで、動物の昼行性・夜行性を決定するメカニズムを明らかにする。生体内の神経活動をリアルタイムに計測するためには、脳深部の特定細胞から非侵襲的にシグナルを得ることが重要となる。これまで作成を手掛けてきた発光タンパク質を用いたカルシウムプローブ(Okiluc-CaM)と、合成基質を組み合わせ、発光波長が700nm付近にまでシフトする事を確認した。近赤外光は生体透過性が高いことから、このツールが非侵襲光計測に適しているといえる。実際に光電子増倍管を用い、マウスの線条体の神経活動を非侵襲的に計測する事ができるようになってきた。また自由行動下マウス脳内の光計測を行うシステムの開発も行った。
2: おおむね順調に進展している
生物発光タンパク質を用いたカルシウムプローブがin vivoに応用できることを確認できたため、おおむね順調に研究が進んでいるといえる。
作成した非侵襲光計測システムを用い、昼行性動物または夜行性マウスを昼行性に変えたマウスを用い、特定の脳領域における神経活動のリアルタイム計測を行う。同時に全脳レベルの神経活動様式を、脳透明化技術を用い明らかにする。GRABセンサーを導入し、伝達物質イメージングのリアル計測を行い、昼行性・夜行性動物の行動を決定する神経回路の動作原理を見出す。
コストのかからないイメージングツール開発を先に進めてきたため。次年度は動物実験を中心に研究を進める。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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