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2021 年度 実施状況報告書

競合を介したがん微小環境制御とその遺伝的基盤の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K19257
研究機関名古屋大学

研究代表者

大澤 志津江  名古屋大学, 理学研究科, 教授 (80515065)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2023-03-31
キーワード細胞間相互作用 / がん制御 / ショウジョウバエ
研究実績の概要

細胞間の競合現象「細胞競合」は、がん制御を担う重要な細胞間相互作用として認識されつつあるが、その分子基盤はいまだ不明な点が多い。本年度は、ショウジョウバエ上皮において、進化的に保存されたがん抑制性Hippo経路を不活化した(Hippo不活化)細胞群が、細胞競合を介して正常細胞を駆逐してその領地を拡大する(スーパーコンペティション)現象を対象とした、2種類の大規模遺伝学的スクリーニング(I)正常細胞群の役割をターゲットとした“細胞非自律的”スクリーニングおよび(II)スーパーコンペティションの “場(がん微小環境)”を成立させる因子の遺伝学的スクリーニングを開始した。(I)においては、CRISPR-Cas9技術により変異を導入した約850遺伝子の突然変異系統についてスクリーニングを行い、Hippo不活化細胞群によるスーパーコンペティションを細胞非自律的に抑制する系統を9系統、促進する系統を2系統をそれぞれ単離することに成功した。(II)においては、ショウジョウバエ全ゲノムの80%以上をカバーする染色体欠失系統(約1,500系統)を用いて、細胞競合の“がん微小環境”に一連の染色体欠失変異を導入し、この競合を正や負に制御する因子を探索し、これまでに、Hippo不活化細胞群によるスーパーコンペティションを抑制する染色体欠失系統を3系統単離している。また、このうち1系統について遺伝学的解析を実施した結果、正常細胞で機能し、Hippo不活化細胞群の領地拡大を細胞非自律的に促進させる遺伝子を同定することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、Hippo不活化細胞群によるスーパーコンペティションを制御する2種類の大規模遺伝学的スクリーニングを開始し、細胞非自律的な制御遺伝子を複数同定することに成功した。この成果は、本スクリーニング系が有効に機能すること、およびHippo不活化細胞群を細胞非自律的に制御する仕組みが確かに存在することを示唆してことから、細胞競合を介したがん制御機構の理解を目指す上で、研究推進が順調に行われていると言える。

今後の研究の推進方策

引き続き、2種類の大規模遺伝学的スクリーニングを推進すると同時に、スクリーニングにより単離された突然変異系統について、責任遺伝子の同定を行うと同時に、その細胞競合における役割を遺伝学的実験および分子生物学的実験により明らかにする。また並行して、がん微小環境を制御し得るショウジョウバエ血球系細胞(ヘモサイト)について、RNAsequence解析を行う。具体的には、種々のがん原性細胞をモザイク状に誘導した複眼原基に対するヘモサイトの挙動を解析し、ヘモサイトが特異的に大量に集積するがん原性細胞をまず同定する。次に、同定されたがん原性細胞群を複眼原基に誘導した個体のヘモサイトをフローサイトメトリーにより分取し、発現が変動する遺伝子群をRNAsequenceにより同定する。

次年度使用額が生じた理由

本年度は、コロナウイルス感染状況により、ショウジョウバエ関連消耗品や試薬の入手が滞ったため、研究室ですでに入手済のショウジョウバエ系統を利用して効率的に研究を推進する方向へと転換した。次年度は、研究推進に必須のショウジョウバエ系統・消耗品および試薬の入手を行い、RNAsequence解析や、遺伝学的解析およびライブイメージング解析を強力に推進する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Yorkie drives supercompetition by non-autonomous induction of autophagy via bantam microRNA in Drosophila2022

    • 著者名/発表者名
      Nagata Rina、Akai Nanami、Kondo Shu、Saito Kuniaki、Ohsawa Shizue、Igaki Tatsushi
    • 雑誌名

      Current Biology

      巻: 32 ページ: 1064~1076.e4

    • DOI

      10.1016/j.cub.2022.01.016

    • 査読あり
  • [雑誌論文] JNK and Yorkie drive tumor malignancy by inducing L-amino acid transporter 1 in Drosophila2021

    • 著者名/発表者名
      Cong Bojie、Nakamura Mai、Sando Yukari、Kondo Takefumi、Ohsawa Shizue、Igaki Tatsushi
    • 雑誌名

      PLOS Genetics

      巻: 17 ページ: 1009893~1009893

    • DOI

      10.1371/journal.pgen.1009893

    • 査読あり
  • [学会発表] ショウジョウバエが明かすがんのバイオロジー2021

    • 著者名/発表者名
      大澤 志津江
    • 学会等名
      第80回日本癌学会学術総会
    • 招待講演

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公開日: 2022-12-28  

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