研究課題/領域番号 |
21K19271
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
太田 訓正 九州大学, 基幹教育院, 教授 (90244128)
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研究分担者 |
菅 裕 県立広島大学, 生命環境学部, 教授 (30734107)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | リボソーム / 形質転換 / 単細胞生物 / 多細胞生物 |
研究実績の概要 |
申請者は、乳酸菌をヒト線維芽細胞に取り込ませると、宿主細胞が形質転換される現象を世界に先駆けて報告した(Ohta et al., PLOS ONE 2012:日米特許取得済み)。その後、古くからタンパク質合成装置と考えられてきたリボソームが、形質転換の物質実体であることを突き止めている(Ito et al., Sci. Rep. 2018)。 5界説とは、全ての生物を5つの界に分ける考えである。原核細胞から真核細胞への移行は、真核細菌が古細菌に感染した細胞内共生説により説明でき、申請者はこの移行を担っているのはリボソームであると考えている。単細胞生物は同じ種類の細胞しか作らず、多細胞生物は様々な種類の細胞を作ることから、単細胞生物から多細胞生物への進化は、一つの細胞が異なった種類の細胞を作り出すことだと考えられるが、単細胞生物から多細胞生物への転換を説明でき得る説は存在しない。本申請では、リボソームを動物に近縁な原生生物(カプサスポラ、クレオリマックス;ライフサイクルで単細胞と多細胞形態の両方をとる生物)に導入し、単細胞生物から多細胞生物への転換を実験的に再現し、多細胞生物進化の基本原理を明らかにする。 本申請において、動物に近縁な単細胞生物にリボソームを導入することにより多細胞生物の特徴(細胞分化、細胞接着、細胞間連絡)を誘導できれば、リボソームの新たな機能的一面を実験的に解き明かすだけでなく、多細胞生物進化の基本原理のひとつが明らかになり、発生・進化学に大きなインパクトを与えることが期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、単細胞生物に外部からリボソームを導入する既知の方法が存在せず、単細胞生物(クレオリマックスとカプサスポラ)のトリプシン処理など様々な酵素を試みたが、上手くいかなかった。そこで、単細胞生物を飢餓状態にし、培養液中にL12タンパク質にHisタグが付いた大腸菌由来リボソームタンパク質を加えたところ、単細胞生物内に大腸菌由来のリボソームが取り込まれていることを免疫染色法により確認出来た。
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今後の研究の推進方策 |
クレオリマックスに、L12タンパク質にHisタグが付いた大腸菌由来リボソームタンパク質を取り込ます方法が確立出来たので、今後は、取り込まれたリボソームが宿主であるクレオリマックスに対してどのような影響を及ぼしているかを検証する。まず、リボソームを取り込んだクレオリマックスの形態。次に、多能性マーカーであるOct4などの発現誘導。最後に、クレオリマックスが他の種類の細胞に分化出来るかその分化能を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初は、クレオリマックスの培養方法やリボソームを取り込ませるための実験方法が確立出来ておらず、実験が進まなかった。 今年度は、どうにか実験方法も確立することが出来、実験もスムーズに遂行されている。
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