研究課題/領域番号 |
21K19272
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久米 篤 九州大学, 農学研究院, 教授 (20325492)
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研究分担者 |
日渡 祐二 宮城大学, 食産業学群, 教授 (10373193)
蒲池 浩之 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (40262498)
藤田 知道 北海道大学, 理学研究院, 教授 (50322631)
唐原 一郎 富山大学, 学術研究部理学系, 教授 (60283058)
富田 祐子 (半場祐子) 京都工芸繊維大学, 応用生物学系, 教授 (90314666)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 重力応答 / 過重力栽培装置 / 遺伝的解析 / 成長制御技術 / 宇宙実験 / 遺伝子組み換え |
研究実績の概要 |
1)重力環境(G)を変化させた栽培:地上栽培実験で、既存の装置を利用して1g, 2.3g, 10gの3つの異なる過重力環境におけるヒメツリガネゴケの栽培実験を実施した。また、ウキクサ類の栽培実験も実施した。さらに、宇宙ステーション内でコケの長期栽培を実施するための超小型栽培システムの開発を民間企業と協力して開始した。 2)RNA-seqによる遺伝子発現変動解析:地上栽培実験に加えて宇宙栽培実験より回収できたμg, 1gのサンプルを用い、これら全てのサンプルでRNA-seq解析を行い、網羅的に遺伝子の発現変動を調べた。その結果、重力変化に伴う成長制御の鍵となるAP2転写因子を見出した。これらはいずれもこれまでに報告の無いグループであることが判明した。 3)細胞レベルおよび個体レベルにおける重力応答メカニズム解明:転写因子AP2を過剰発現させたヒメツリガネゴケを使用し、過重力をかけて栽培した。その後、形態観察、光合成機能の測定を通して、AP2が植物の過重力応答に果たす役割の詳細を解析した。10gと1gで8週間、ヒメツリガネゴケの野生型とAP2過剰発現体を栽培したところ、すべての系統で10gで栽培したコケコロニーの光合成速度と植物体内CO2コンダクタンスが1gで栽培したコロニーを上回った。また、10gと1gで栽培したコケコロニーの差をそれぞれの系統で比較すると、過剰発現体より野生型での差が大きくなった。転写因子AP2の過剰発現体は過重力栽培により、野生型より葉緑体サイズが大きくなったが、光合成速度の上昇は野生型の光合成速度の上昇に満たなかった。この理由として、過剰発現体の葉緑体サイズは野生型より増大したが、同時に細胞壁が厚くなったため、CO2透過性の上昇が抑制されてしまった可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パンデミックの影響のために、2021年中頃より、遠心栽培装置を作成するために必要な部品が入手できない、もしくは納品に半年以上の時間がかかる状況なった。そのため、当初予定していた2022年3月の納品が困難となり、2022年4月以降に延期となった。結果として、予定されていた重力環境を変化させた栽培実験の一部は、2022年度以降の実施となった。
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今後の研究の推進方策 |
納品予定の遠心栽培装置を利用して、遅れている過重力栽培実験を行う。光合成に影響する細胞CO2透過性やオルガネラの形態観察を電子顕微鏡によって詳細に行う。ライブイメージングにより、ミオシン突然変異体等の原形質流動の変化と重力応答、成長との関係を調査する。 双子葉植物のシロイヌナズナや単子葉植物のモデル草本としてコウキクサでも実験を行う。そして、ヒメツリガネゴケで見出した重要な遺伝子のオルソログがあればそれらに注目する。また過重力長期栽培により変化した組織でのRNA-seqを行い、重力に応答し成長に重要な遺伝子(群)を探索する。 注目した遺伝子について重要度が高いと考えるものから遺伝子を改変し、光合成速度や成長速度、根の比率、茎の特性など、重要な成長特性を変化させることに挑戦する。 陸上植物間の重力応答の共通点や相違点を明らかにすると同時に、農作物の収量増産などバイオマスの増産に直結するような新しい培養法や遺伝子組換え植物の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの影響のために、遠心栽培装置を作成するために必要な部品が入手できない、もしくは納品に半年以上の時間がかかる状況となった。そのため、当初予定していた2022年3月の納品が困難となり、2022年4月以降に延期となった。結果として、予定していた研究の一部も実施できなくなり、次年度使用額が生じた。装置が納品され次第実験を実施し、繰り越し分を順次使用する予定である。
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