研究課題/領域番号 |
21K19274
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
木村 幸太郎 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20370116)
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研究分担者 |
中川 敦子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (90188889)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 遺伝学的解析 / カルシウムイメージング |
研究実績の概要 |
神経科学において近年注目されつつある高次脳機能は「感情」である。研究代表者木村は、線虫C. エレガンスにおいて「感情」を反映すると考えられる刺激応答行動を見出した。本研究では、(1) この刺激応答行動を順遺伝学的手法で解析することにより「感情」に関わる遺伝子を網羅的に同定すること、また (2) 先端的な全脳神経活動イメージングによって、C. エレガンスの全脳神経活動が「感情」によってどのように変化するかを明らかにすることを目指している。
当該年度は、主に以下を行った。 (A) 「感情」に関わる遺伝子の順遺伝学的解析による同定(木村):C. エレガンス研究の長所である順遺伝学的解析によって、「感情」を反映すると考えられる刺激応答に異常を示す変異株を単離する。順遺伝学的スクリーニングから5つの候補変異株を単離していたが、当該年度は表現型再現性の確認/戻し交配/相補性テストなどを行った後に、全ゲノムシークエンスを行った。今後、表現型回復実験を順次行う予定である。 (B) C. エレガンスの刺激応答と「感情」との関連の検証(木村および中川): ヒト心理学の専門家である中川と、野生株および変異株の刺激応答行動がどの範囲で「感情」の基礎科学的基準を満たすかを議論した。 (C) 全脳活動イメージングによるC. エレガンスの「感情」と神経活動の解明(木村):「感情」は脳活動のさまざまな面に影響する。脳がわずか200個弱の神経細胞によって構成されるC. エレガンスを用いれば、「感情」によって脳全体の活動がどのように変化するかを計測することができる。当該年度は、木村らが最近独自に確立した高速三次元顕微鏡を用いた全脳神経細胞活動のカルシウムイメージングのハードウェアの最適化およびイメージングのための形質転換株の検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
幾つかの困難が予想されたが、予定通り進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
(A) 「感情」に関わる遺伝子の順遺伝学的解析による同定(木村): 表現型回復実験を行うことで、原因遺伝子を同定する。 (B) C. エレガンスの刺激応答と「感情」との関連の検証(木村および中川): 中川との議論を継続し、特に新たに同定された変異株に関して、どの範囲で「感情」の基礎科学的基準を満たすかを行動実験を介して検証する。 (C) 全脳活動イメージングによるC. エレガンスの「感情」と神経活動の解明(木村): 全脳神経細胞活動のカルシウムイメージングを行うことで、「感情」と神経細胞活動の関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大防止により学会や情報交換のための出張が基本的に禁止になり、旅費の分の差額が生じた。
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