神経科学において近年注目されつつある高次脳機能は「感情」である。研究代表者木村は、線虫C. エレガンスにおいて「感情」を反映すると考えられる電気刺激応答行動を見出した。本研究では、(1) 「感情」に関わる遺伝子を同定すること、また (2) 先端的な高速三次元イメージングによる全脳神経活動計測によって、C. エレガンスの全脳神経活動が「感情」によってどのように変化するかを明らかにすることを目指した。 当該年度は、投稿した論文の追加実験に終始した。R3年度末に投稿した論文原稿に対してR4年5月に論文改訂の指摘があった。1つは、感情価を持つならば刺激は無条件刺激としてはたらき連合学習が引き起こされるのでは無いかという指摘であった。これに関しては半年以上尽力したが可能性を示唆する結果は得られなかった。しかし、我々が検討しなかった条件で有効である可能性は残る。もう1つは刺激応答に関わる遺伝子の機能部位を同定するようにという指摘であり、これに関しては2つの方法によるRNA干渉法を用いてほぼ結論を出すことができた。現在、改訂した論文の再投稿の準備を進めている。 さらに、電気刺激に対する全脳神経活動を明らかにするために、高速三次元カルシウムイメージングを行った。その結果、電気刺激そのものに対して反応を示す神経活動と、その後の応答行動に関与するであろう神経活動それぞれが明確に観察されるという予備的な結果が得られた。この結果に基づいて、今後も研究を進める予定である。
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