研究課題
これまでの研究で、チョウザメ、ツメガエル、トラザメにおいて、発生過程での糖新生が起こるという状況証拠が揃っていた。すなわち、発生過程におけるグルコースの増加と、糖新生に関与する酵素をコードする遺伝子の発現が確認されていた。今年度は、安定同位体標識代謝物(トレーサー)を利用した代謝活性の検出に注力した。トラザメにおいては、糖新生関連酵素の発現が確認されていた卵黄嚢膜をサンプリングし、これを培養液に入れ、培養液中にトレーサーを導入した。数時間の培養後、質量分析計を用いてこれを分析すると、やはり導入したトレーサー代謝物をもとにグルコースを合成していることが判明した。同様に、ネッタイツメガエルの胚を用いて培養実験を行った結果、やはりグルコースの合成活性が検出された。これらの結果から、トラザメの卵黄嚢膜およびネッタイツメガエルの胚は、糖新生を行う事が明らかとなった。これまでの結果と合わせて考察する。本研究の結果、コチョウザメ、ネッタイツメガエル、トラザメにおいて、発生過程でのグルコースの増加と糖新生関連遺伝子の発現が見られた。コチョウザメとネッタイツメガエルにおいては内胚葉、すなわち将来の腸においてこれらの遺伝子が発現していた。トラザメでは、卵黄嚢膜に存在する卵黄多核層様組織において糖新生関連遺伝子が発現していた。さらに、ネッタイツメガエルとトラザメでは、実際に糖新生が行われていることがとトレーサー実験によって証明された。これらの結果から、脊椎動物の発生過程では糖新生が起こること自体は保存されているものの、それを行う組織は分類群によって異なることが明らかとなった。トラザメでは卵黄多核層様組織で糖新生が起こっていたことから、この組織と真骨魚類の卵黄多核層の関係に興味が持たれる。現在、同様に卵黄多核層様組織が確認されている鳥類のウズラを用いた解析にも着手している。
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PNAS Nexus
巻: 3 ページ: pgae125
10.1093/pnasnexus/pgae125