QQIH中の生理・神経機能の解析を高時間分解能で行うため、光遺伝学により長時間のQIHを誘導する実験系を構築した。OPN4を用いて微弱な光でGqシグナリングを活性化させることにより神経の興奮を試みた。感度を上げるために不活性化に関与するC末端側のリン酸化クラスター領域を欠損させた(hOPN4dC)。Qニューロンに発現させ光照射の体温への影響を観察した。3-10 mWという極めて弱い光で体温の低下を誘導することが可能であった。重要なことに、24時間という長期間にわたって光照射を持続させても神経の損傷は観察されず、何度もQIH誘導が可能であった。この系を用いてQニューロンの活性化によって体温の低下に先行して心拍数が急激に低下することを見出しており、Qニューロンの新しい機能を提唱した。光照射を終了することで30分以内に元のレベルに体温が戻ることが判明した。一方、概日時計に与える影響を概日時計によって制御される生理リズムを指標に解析した。恒暗条件においてマウスの輪回し行動リズムの位相はQIHによって影響を受けないことを見出した。つまり、生体においてQIH中も概日時計が振動していることが示唆された。また、体温リズムの変化をQIH前後で比べても、何も同調因子がない条件においても復温後にQIH前と同じ振幅でリズムを刻み始めることも明らかとなった。QIH中は生理リズムの出力は完全にシャットダウンされるが、復温後に何ら同調因子がない条件においてもそれらの生理リズムはQIH前の位相で回復することが示された。また、AVPeに発現しているQニューロンの核を抽出し、シングルセル解析を実施しQニューロンの制御に関わる因子群を複数同定した。この情報をもとに、Qニューロンに作用する可能性のある因子を数個ピックアップし、カルシウムイメージングおよび電気生理実験によってQニューロンを興奮させる因子を見出した。
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