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2021 年度 実施状況報告書

ヘビ特有の体軸伸長を誘導する進化的に獲得した分子機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K19295
研究機関名古屋大学

研究代表者

鈴木 孝幸  名古屋大学, 生命農学研究科, 准教授 (40451629)

研究期間 (年度) 2021-07-09 – 2024-03-31
キーワードヘビ / 脊椎骨 / 進化 / パターン / 遺伝子発現 / 発生 / 初期胚
研究実績の概要

ヘビは手足の退化や非常に多くの脊椎骨を持つなど、他の脊椎動物とは異なる特異な形態的特徴を持つ。ヘビの細くて長いと言われる体の形は、胸腰椎の脊椎数が多いことに起因する。そこで本研究では、ヘビの体が長い謎を解明するために、発生期にヘビ特異的に脊椎骨の原器である体節が多く作られるメカニズムの解明を目指している。我々は日本固有種であるシマヘビの親個体から胚の採取を行い、これまで原腸陥入期から産卵直前までのシマヘビ胚の発生ステージ表を作成した。その中で、ヘビ胚の発生中では中軸幹細胞の数が異常に増大していることを発見した。そこで次に、この中軸幹細胞の分子生物学的特性を解明することにより、ヘビ特有の体軸の伸長を誘導する進化的に獲得された分子機構を解明したいと考えた。シマヘビ初期胚において体節が10-100個形成された胚の中軸幹細胞を単離し、そこからRNAを抽出した。比較対象として我々のこれまでの実験から明らかになっている、中軸幹細胞数が少ないスッポン胚、ニワトリ胚において同様のステージの中軸幹細胞を単離した。今年度に全ての動物胚の中軸中胚葉の単離とRNAの採取を予定通り行うことが出来た。RNAは、次年度はRNA-seq を行うために十分な1マイクログラム以上の量を採取することに成功した。
ヘビ毒の進化的な獲得とは異なり、体節形成過程において、ヘビ特異的に体節数を増やすための新規遺伝子が獲得されたことは想定しづらい。ヘビ特異的な遺伝子の発現を調節するエンハンサー領域を同定するために、シマヘビ胚の中軸幹細胞を単離し、オープンクロマチン領域を網羅的に同定するATAC-seqを行った。オープンクロマチン領域を同定するのに十分なノイズの少ないデータを取得することに成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ヘビ特有の体軸の伸長を誘導する進化的に獲得された分子機構を解明するために、シマヘビ初期胚において体節が10-100個形成された胚の中軸幹細胞を単離し、そこからRNAを抽出した。比較対象として我々のこれまでの実験から明らかになっている、中軸幹細胞数が少ないスッポン胚、ニワトリ胚において同様のステージの中軸幹細胞を単離した。今年度に全ての動物胚の中軸中胚葉の単離とRNAの採取を予定通り行うことが出来た。RNAは、次年度はRNA-seq を行うために十分な1マイクログラム以上の量を採取することに成功した。そのため、本年度の実験は予定位通り進行していると言える。
ヘビ毒の進化的な獲得とは異なり、体節形成過程において、ヘビ特異的に体節数を増やすための新規遺伝子が獲得されたことは想定しづらい。ヘビ特異的な遺伝子の発現を調節するエンハンサー領域を同定するために、シマヘビ胚の中軸幹細胞を単離し、オープンクロマチン領域を網羅的に同定するATAC-seqを行った。オープンクロマチン領域を同定するのに十分なノイズの少ないデータを取得することに成功した。来年度はRNA-seqの結果から得られた発現が増大もしくは減少している遺伝子の遺伝子発現制御領域の同定を予定通り行う予定であり、これらの実験結果から研究が順調に予定通り進行していると言える。

今後の研究の推進方策

次年度は上述したようにそれぞれの胚から単離した中軸幹細胞から得たRNAを用いてトランスクリプトーム解析を行う。スッポン、ニワトリ、シマヘビの順番で遺伝子の発現量が多く・少なくなっているものを選定し、中軸幹細胞の増加を誘導する候補遺伝子を得る。そして、ATAC-seqの結果から得られたオープンクロマチン領域のデータからシマヘビ胚で遺伝子の発現が増大、もしくは減少しているものを同定し、それらの遺伝子の遺伝子発現領域の候補領域を得る。こうして得られたヘビ特異的に中軸幹細胞の数を増大させている候補遺伝子を、ニワトリ胚の中軸幹細胞に電気穿孔法を用いて遺伝子導入、もしくはshRNAを用いてノックダウンし、形成される体節の数が増える又は減るか調べる。またATAC-seqの結果から見つけたそれらの遺伝子のシマヘビ特異的エンハンサー候補領域にEGFPをつなげたコンストラクトをニワトリ胚の中軸幹細胞の領域に遺伝子導入し、EGFPの発現を指標にエンハンサー活性を有するか調べる。これによりヘビ特異的にエンハンサーとして獲得された塩基配列を同定する。

次年度使用額が生じた理由

RNA-seqを1年目に行いたいと考えていたが、年度末に次世代シークエンスの会社に連絡をした時に、コロナ感染症の影響でシークエンス業務が滞っており、年度内に納品をすることが難しいとの回答があった。そのため、RNA-seqを行うのを次年度にすることとした。そのため、RNA-seqのサンプルを作成するための試薬、並びに次世代シークエン代金として次年度に使用する計画となった。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件)

  • [国際共同研究] University of Wisconsin-Madison(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Wisconsin-Madison
  • [雑誌論文] Uterus-specific transcriptional regulation underlies eggshell pigment production in Japanese quail2022

    • 著者名/発表者名
      Ishishita Satoshi、Kitahara Shumpei、Takahashi Mayuko、Iwasaki Sakura、Tatsumoto Shoji、Hara Izumi、Kaneko Yoshiki、Kinoshita Keiji、Yamaguchi Katsushi、Harada Akihito、Ohmori Yasushige、Ohkawa Yasuyuki、Go Yasuhiro、Shigenobu Shuji、Matsuda Yoichi、Suzuki Takayuki
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 17 ページ: 0265008~0265008

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0265008

  • [雑誌論文] Downregulation of <i>Grem1</i> expression in the distal limb mesoderm is a necessary precondition for phalanx development2021

    • 著者名/発表者名
      Lancman Joseph J.、Hasso Sean M.、Suzuki Takayuki、Kherdjemil Yacine、Kmita Marie、Ferris Andrea、Dong P. Duc S.、Ros Marian A.、Fallon John F.
    • 雑誌名

      Developmental Dynamics

      巻: 251 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1002/dvdy.431

  • [雑誌論文] The dynamic spatial and temporal relationships between the phalanx‐forming region and the interdigits determine digit identity in the chick limb autopod2021

    • 著者名/発表者名
      Suzuki Takayuki、Fallon John F.
    • 雑誌名

      Developmental Dynamics

      巻: 250 ページ: 1318~1329

    • DOI

      10.1002/dvdy.323

URL: 

公開日: 2022-12-28  

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