研究課題/領域番号 |
21K19315
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
山下 貴之 藤田医科大学, 医学部, 教授 (40466321)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 大脳皮質 / 体性感覚 / 高次機能 / 洞毛 |
研究実績の概要 |
高等動物では、視覚や聴覚といった感覚は大脳皮質の一次感覚野に入力され、その後二次、三次とより高次の感覚野において階層的に処理されることはよく知られている。ところが、体性感覚については一次体性感覚野(S1)のすぐ外側に二次体性感覚野(S2)があるのみで、高次情報処理機構についての研究は遅れている。マウスS1から投射する軸索をマッピングすると、S2以外に軸索末端が集積する多くの小領域がある(Yamashita et al., Front. Neuroanat., 2018)。S1からこれら小領域にどのような体性感覚情報が伝播していくかは体系的な研究がなく、よく分かっていない。そこで本研究では、それらの各小領域を新規S2候補領野と捉え、これらの領野における体性感覚情報表現を網羅的に解析し、新規な高次体性感覚野の発見につなげることを目標としている。本年度は、S1の投射先であり、かつ、特に社会性行動への関与がある異顆粒帯に着目し、実験系を開発して記録を開始した。異顆粒帯はS1バレル野に隣接する幅数百マイクロメーターの狭い領域であるため、まずはイントリンジックイメージングにより記録前に異顆粒帯の位置を同定する手法を開発した。次に、頭部固定マウスの異顆粒帯からシリコンプローブ記録を行いながら、マウスに物体や他マウスを触診させる実験系を確立した。これまでに、ソーシャルタッチや他マウスの位置関係に相関を示す細胞が見出されており、S1よりも高次な情報処理があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験開始当初はブレグマを起点とした座標により異顆粒帯を同定しようとしたものの、異顆粒帯からの記録成功確率が高くなかったため、イントリンジックイメージングを導入したところ成功確率が上昇した。また、これまでのデータから、すでに、異顆粒帯には、触覚情報のみならず、他マウスの位置関係という高次な情報表象があることが示唆されており、本研究の目標の主な部分が達成される見通しとなった。したがって、本研究の進捗は開始一年目としては順調と言える。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き異顆粒帯からの記録を続け、情報表象の推定とデコーディングを行う。異顆粒帯には前側、中央、後側に複数の亜領域があり、亜流域ごとの表象の違いを同定する。また、情報表象がはっきりした段階で、社会性行動における機能同定のため、異顆粒帯亜領域の活動操作により社会性行動が変化するか否かを調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究室員の技術向上によりシリコンプローブ電極の再利用成功率が上昇し、消耗品費が予想より少額であった。また、新型コロナウイルス感染流行の影響で、学会がオンライン化したため、参加旅費がかからなかった。さらに、予定していた論文投稿料は論文発表が遅れているため、来年度以降に持ち越しとなったため。
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