研究実績の概要 |
高等動物では、視覚や聴覚といった感覚は大脳皮質の一次感覚野に入力され、その後二次、三次とより高次の感覚野において階層的に処理されることはよく知られている。ところが、体性感覚については一次体性感覚野(S1)のすぐ外側に二次体性感覚野(S2)があるのみで、高次情報処理機構についての研究は遅れている。マウスS1から投射する軸索をマッピングすると、S2以外に軸索末端が集積する多くの小領域がある(Yamashita et al., Front. Neuroanat., 2018)。S1からこれら小領域にどのような体性感覚情報が伝播していくかは体系的な研究がなく、よく分かっていない。そこで本研究では、それらの各小領域を新規S2候補領野と捉え、これらの領野における体性感覚情報表現を網羅的に解析し、新規な高次体性感覚野の発見につなげることを目標としている。昨年度に開発した実験系を用いて、本年度は、S1の投射先であり、かつ、特に社会性行動への関与がある異顆粒帯からシリコンプローブ記録を行いながら、マウスに物体や他マウスを触診させ、その反応を記録した。未発表であるため詳細は割愛するが、異顆粒帯に社会性行動のある局面をエンコードするニューロンを発見した。さらに、異顆粒帯内の小領域ごとに神経活動を解析したところ、社会性行動の特定局面に反応する細胞群の分布が小領域ごとに異なることも見出された。この反応は触覚とは直接リンクしないため、体性感覚ではないと考えられるが、非常に高次な脳機能を推測させる。
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