研究課題/領域番号 |
21K19318
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
南 雅文 北海道大学, 薬学研究院, 教授 (20243040)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 行動薬理学 / ディープラーニング / 慢性痛 / 不安障害 / うつ病 / 薬物依存 / 行動嗜癖 |
研究実績の概要 |
本研究では、ディープラーニングなどのAI技術を駆使した最先端の画像解析により自由行動下の病態モデル動物から仮説フリーに行動情報の収集・解析を行うことで、これまで研究者が気づき得なかった評価項目を抽出しうる新しい行動薬理試験を構築する。さらに、近年進歩が著しい、カルシウムイメージングを用いたインビボ神経活動計測と組み合わせることにより、行動情報と脳内神経活動の相関を明らかにすることで、精神変容・疼痛や薬物作用を鋭敏かつ詳細に解析できる新しい行動薬理学を創成する。2021年度は、ニコチン依存の神経機構解析のため、ニコチン退薬による嫌悪行動を、条件付け場所嫌悪性試験を用いて解析し、分界条床核におけるノルアドレナリン神経情報伝達の関与を明らかにした。さらに、世界保健機関(WHO)の国際疾病分類第11回改訂版(ICD-11)に、ゲーム障害(gaming disorder)の定義が収載されるなど、ゲームやWEBに対する行動嗜癖が今後益々問題になっていくことが考えられるため、行動嗜癖の神経機構解析や治療薬・治療法開発に役立つ新しい行動試験系を開発することを目指し、マウスが好んで行う輪回し行動に対する行動嗜癖の形成と、報酬行動や依存に重要な役割を果たす側坐核内ドパミン遊離との関連を検討するための実験系を構築した。2022年度は、輪回し行動に対する行動嗜癖形成後のマウスの行動を、例えば、輪回し装置を撤去した場合などの、様々なシチュエーション下で記録し、AI技術を駆使した画像解析により行動嗜癖を形成していないマウスとの行動の違いを明らかにすることで、行動嗜癖を評価するための行動試験系を確立する。また、ドパミンをはじめとする脳内神経伝達物質の遊離変化との相関を解析し、行動嗜癖の神経機構解明のための手がかりを得る。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
行動薬理学的解析については、1)ニコチン退薬による嫌悪行動を、条件付け場所嫌悪性試験を用いて解析し、分界条床核におけるノルアドレナリン神経情報伝達の関与を明らかにし、さらに、2)マウスが好んで行う輪回し行動に対する行動嗜癖の形成と、報酬行動や依存に重要な役割を果たす側坐核内ドパミン遊離との関連を検討するための実験系を構築するなどの進捗が得られた。一方で、新しい行動試験系の構築と脳内ドパミン遊離計測系の構築に注力したため、情報科学分野の研究者との連携によるAI技術を駆使した画像解析による行動評価システム構築については予定より遅れている。そのため、現在までの進捗状況を「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、輪回し行動に対する行動嗜癖形成後のマウスの行動を、例えば、輪回し装置を撤去した場合などの、様々なシチュエーション下で記録し、AI技術を駆使した画像解析により行動嗜癖を形成していないマウスとの行動の違いを明らかにすることで、行動嗜癖を評価するための行動試験系を確立する。また、ドパミンをはじめとする脳内神経伝達物質の遊離を、先端的なカルシウムイメージングを駆使したファイバーフォトメトリーを用いて高時間分解能で計測し、マウスの行動との相関関係を解析し、行動嗜癖の神経機構解明のための手がかりを得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大のためWEB開催となった学会が多かったため旅費の支出が当初計画より少なかった。また、情報科学分野の研究者との連携が遅れたため、連携研究のための支出が当初計画より少なかった。次年度使用額218,624円は、情報科学分野の研究者との連携研究を加速するために計算機使用料などに使用する予定である。
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