研究課題/領域番号 |
21K19319
|
研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
齋藤 徹 北見工業大学, 工学部, 教授 (40186945)
|
研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
|
キーワード | 塩基性薬物 / 迅速精製 / 気液界面 / 疎水性 / かさ高さ / 凝集 |
研究実績の概要 |
以下の研究実施計画に基づき研究を実施した。 (1) 薬物選択的気泡分離系の設計と制御因子の解明 薬物と原料や中間体との分離を可能にする気泡分離系を実現するための気液界面を設計した。疎水性や酸塩基特性の異なる薬物や合成中間体の気泡分離挙動に及ぼす微量添加物(アルコール、カルボン酸、アミン)や液性(pH、塩濃度)の影響を調べ、薬物の分離を支配する因子として、疎水性と分子のかさ高さが重要であることを明らかにした。液性のうち、溶液のpHについては、薬物の電荷が最小となる(疎水性が最大となる)条件が、塩(対イオン)としては、生成するイオン対の疎水性が気液界面への吸着、すなわち、フローテーション分離に影響を及ぼす因子であることを明らかにした。 (2) 微視的環境プローブの蛍光測定による気液界面の特性評価 気液界面の特性評価方法として、微視的環境プローブの蛍光スペクトル測定を試みた。気液界面生成時の蛍光強度増感が観測されたが、明瞭なスペクトルシフトは観測されなかった。 (3) 分子動力学シミュレーションによる薬物捕捉気液界面の設計 液中および気液界面における薬物の挙動を分子間相互作用に基づく分子動力学シミュレーション(LAMMPS)ソフトWinmosterにより再現した。水中にランダムに配置した1分子の塩基性薬物が気液界面に吸着することや数十分子の薬物が気液界面において凝集する現象が観察され、実験系との一致が見られた。 以上の知見に基づき、薬物合成反応後に得られた粗製物から3回の分離操作を経て高純度薬物を得た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に記載の低分子薬物の分離精製例を見出し、薬物合成後の粗製物からの精製を実現した。この過程において、薬物分子とビルディングブロック間の疎水性やかさ高さの違いが分離の選択性の支配要因であることを見出し、薬物選択性を調節するための課題を設定することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
(1) 本法の適用性および適正性拡大の検討: 今年度の検討により可能性が見出された塩基性薬物の他、解熱鎮痛薬や抗炎症薬を含む酸性薬物、さらに近年ニーズが高まっている中分子量の薬物のフローテーション分離の可能性を検討する。疎水性やかさ高さの異なる様々な薬物や合成原料(ビルディングブロック)および副生成物について回収率を求め、提案する方法の適用範囲と適用性拡大の可能性を明らかにする。 (2) スケールアップおよび連続化の検討: これまでの取り組みでは、フローテーション槽としてオープンカラムを用い、空気をガラスフィルターに通すことにより、気泡を発生させている。しかし、この方法はバッチ操作に限られる他、気泡の編流により分離効率が大きく低下する。フローテーション槽の分割や他の分離技術(膜分離)との組み合わせにより、スケールアップと連続処理の両方に対応できる系を設計する。 以上の検討により、薬物をその原料や副生成物、合成時の添加物から選択的かつ高速で分離するシステムを構築する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
半導体供給不足のため薬物の少量合成に必要な精密温度制御のための機器納品の目途が立たなくなった。引き続き納品の目途が立たない状況が続く場合は、現有のオイルバスを用いる加熱に切り替え、代わりに気泡の発生に用いるホモジナイザーのジェネレーターシャフト等の購入に使用する。
|