(1) 薬物選択的気泡分離系の設計と制御因子の解明 薬物と原料や中間体または培養液成分との分離を可能にする気泡分離系を実現するための気液界面を設計する。疎水性や酸塩基特性の異なる薬物や合成中間体の気泡分離挙動に及ぼす添加物やpHの影響を調べ、薬物の分離を支配する因子を解明する。適用可能な薬物の要件を明らかにするとともに、特定の薬物を選択的に分離・濃縮するための分離系の設計を試みる。薬物として、低分子薬物(セレコキシブ、三員環抗うつ薬、抗マラリア薬クロロキンとその誘導体)を検討したところ、いずれの薬物についても、原料となるビルディングブロックと生成物である薬物との分離が達成された。特に、原料化合物や中間体を含むクロロキン粗製物を3回の分離操作により標準物質と同等の高純度品に精製できた。 (2) 微視的環境プローブの蛍光測定による気液界面の特性評価 気液界面の特性評価は専ら和周波分光が用いられているが、薬物選択性の解明に不可欠な界面からの距離を分子レベルの分解能で評価する方法が必要である。気液界面に吸着し、周囲の極性により蛍光スペクトルが変化する微視的環境プローブを探索した。気液界面への吸着性と微視的環境によるスペクトル変化を兼ね備えた蛍光プローブとして、ナフチルアミン誘導体の可能性を見出した。 (3) 分子動力学シミュレーションによる薬物捕捉気液界面の設計 液中および気液界面における薬物の挙動を分子間相互作用に基づく分子動力学シミュレーション(LAMMPS)Winmosterにより再現した。気液界面への薬物の吸着挙動の予測への有効性が確認された。
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