研究課題/領域番号 |
21K19322
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
倉田 祥一朗 東北大学, 薬学研究科, 教授 (90221944)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 腸内細菌叢 / 感染抵抗性 / 神経支配 |
研究実績の概要 |
「病は気から」と言われるように、神経系と、病に対する免疫系との密接な繋がりは、以前より推察されてきた。しかし、神経系による免疫制御に関する研究は、神経系と免疫系が比較的単純な昆虫においてもほとんど進展がない。研究代表者は、経口感染した細菌に対する抵抗性と、腸内細菌叢を制御しているNP3253神経細胞を同定している。本研究では、NP3253神経細胞の特徴を遺伝子発現のレベルで解析すると共に、この神経がどのような制御を受けて、どのように免疫系を制御し恒常性を維持しているかを明らかにする。NP3253神経細胞は、脳から腸管上部にかけて存在し、それらの細胞体は食道下神経節に約60個、脳のキノコ体に約10個存在している。脳内のごく一部の神経細胞の特徴を明らかにすることは容易ではない。そのため、組織全体から特定の細胞の遺伝子発現を高感度に検出する手法であるTaDa(Targeted DNA adenine methytransferase identification, Marshall et al. 2016)法を導入した。大腸菌のDNAメチル化酵素(Dam)を付加したRNAポリメラーゼⅡ(PolⅡ)を、NP3253神経でのみ発現し、その細胞で転写されているゲノム領域をメチル化する。そのメチル化された領域を同定することで、NP3253神経特異的な遺伝子発現状況を知ることができる。過去の解析(Estacio, Biology Open 2020)から、成虫脳の神経細胞の代表的なサブタイプ(コリン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性神経)のDam-PolⅡのTaDa解析データを取得し、NP3253神経のデータと比較した。その結果、NP3253神経群は、1つのサブタイプに分類されるのではなく、むしろ、これらのサブタイプが混ざった神経細胞群であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
組織全体から特定の細胞の遺伝子発現を高感度に検出する手法であるTaDa法を導入し、NP3253神経特異的な遺伝子発現状況を網羅的に明らかにしたところ、NP3253神経群は、成虫脳の神経細胞の代表的なサブタイプ(コリン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性神経)のうち、1つのサブタイプに分類されるのではなく、むしろ、これらのサブタイプが混ざった神経細胞群であることが示唆されたため、本研究課題はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題は、おおむね順調に進展していることから、当初の研究計画に従って研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、参加を予定していた学会がオンライン開催となり、予定していた旅費の執行がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度、開催が予定されている学会への旅費の一部として使用する。
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