研究課題
神経系と、病に対する免疫系との密接な繋がりは、以前より推察されてきた。しかし、神経系による免疫制御に関する研究は、昆虫においてもほとんど進展がない。研究代表者は、経口感染した細菌に対する抵抗性と、腸内細菌叢を制御しているNP3253神経細胞を同定している。本研究では、NP3253神経細胞の特徴を遺伝子発現のレベルで解析すると共に、この神経がどのようにして腸管恒常性を維持しているかを明らかにする。NP3253神経のように、脳内のごく一部の神経細胞の特徴を明らかにすることは容易ではない。そのため初年度は、組織全体から特定の細胞の遺伝子発現を高感度に検出する手法であるTaDa法を導入し、NP3253神経群は、成虫脳の神経細胞の代表的なサブタイプ(コリン作動性、GABA作動性、グルタミン酸作動性神経)が混ざった神経細胞群であることが示唆された。これまでに、NP3253神経細胞を抑制すると、腸内細菌叢が変化することが判明している。今年度、NP3253神経が投射する腸管領域では、A. persiciのみが特異的に増加することが明らかとなった。多様な菌種が混在する生体の腸管では、腸内細菌同士の競合といった副次的な影響が生じてしまい、NP3253神経と特定の腸内細菌の関連を解析することは難しい。そこでNP3253神経とA. persici制御の直接的な因果関係を調べるために、腸内細菌叢をA. persiciで単一化したノトバイオート個体を作成した。その結果、単一菌種からなる腸内細菌叢を持つ個体においても、NP3253神経の不活性化により、腸内細菌量が増加することが明らかとなった。さらにその際、神経阻害により生存率が低下した。これらの結果は、NP3253神経が、単一の腸内細菌のみを有する場合でも、その腸内細菌の量的な制御に関わり、腸内細菌に対する抵抗性の発現に関わる事を示している。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
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