研究課題/領域番号 |
21K19323
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鬼塚 和光 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (00707961)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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キーワード | 貫通構造体 / 核酸 / ロタキサン / カテナン / 環状化 |
研究実績の概要 |
ロタキサンやカテナンといった環状分子を構成成分とする貫通構造体は、そのユニークな構造や性質のため、超分子化学の分野では分子マシンへの展開など様々な研究が試みられている。ロタキサンをキーワードとした研究は数多く行われている一方で、ロタキサン構造構築の難しさのため、生化学分野への応用に関しては未だ課題が多く、更なるブレイクスルーが必要とされている。本研究では独自の研究で見出した標的核酸塩基のフリップアウトを誘起する機能性核酸を利用し、新しい核酸貫通構造体(ロタキサン様構造)を構築することおよびその機能探索によりその構造体の生物機能、特に翻訳反応のコントロールを目標とし研究を行った。 昨年度、最初に設計した分子では貫通構造体の形成に至らなかったため、本年度は再度光反応を用いた新たな手法で開発に取り組んだ。しかし、検討の結果、貫通構造体を構築することはできなかった。これらの結果から、フリップアウト構造を基盤にした貫通構造体の構築は難しいという結論に至った。一方で、昨年度、以前の研究の知見をもとに、テイル鎖をもつ環状化核酸のスリッピングによる標的RNAへの貫通構造体形成を試み、合成法などの改善に成功していたため、こちらに関して更なる機能評価に取り組んだ。 機能評価の一つとして、この貫通構造体形成とリガーゼによる鎖連結を組み合わせ、カテナン構造の構築を試みた。その結果、高収率でRNAとのカテナン構造形成に成功した。これは環状RNAの非共有結合型のラベル化・修飾として使えるため、RNAの新たなツールになると考えている。本成果は、Bioconjugate Chemistryに発表し、プレスリリースも行った。さらに、翻訳への影響を調査するため準備を進めており、今後機能評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では当初、標的核酸塩基のフリップアウトを誘起する機能性核酸を利用し、新しい核酸貫通構造体(ロタキサン様構造)の構築を目指したが、様々な条件を検討した結果、最初の設計による構造体構築は難しいという結論に至った。当初の目的達成を目指すため、代わりの方法として以前の研究の知見をもとに、テイル鎖をもつ環状化核酸のスリッピングによる貫通構造体形成の改良を試み、簡便な貫通構造体形成、さらに標的RNAとのカテナン形成を達成し、論文化することができた。当初の予定とは少し違う形で簡便な貫通構造体形成法を確立することができ、また当初の目的へ向けて準備が進められているため、概ね順調に進んでいるといえる。
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今後の研究の推進方策 |
①貫通構造体の翻訳反応に対する効果を調査する。ロタキサン様構造形成核酸でmRNAの末端、特に3’末端をキャッピングすることでRNA分解酵素等からRNA本体を保護し安定性の増大を狙う。 ②これまでの成果をもとにカテナン様RNAの翻訳効果も調査する。本手法は非共有結合的に環状RNAを修飾することができるため、翻訳反応を邪魔しない環状RNA用の修飾になり得る。翻訳反応が阻害されるようであれば、ヌクレアーゼ処理により環状構造を維持したままテイル鎖のみを切断する。 ③設計した機能性核酸をリンカーでつないだダイマーやトリマーを合成し、それぞれ貫通構造体形成を行うことでmRNAの環状体やmRNAが高度に集積した顆粒体の作成、その機能評価を行う。
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