研究課題
ロタキサンやカテナンといった環状分子を構成成分とする貫通構造体は、そのユニークな構造や性質のため、超分子化学の分野では分子マシンへの展開など様々な研究が試みられている。ロタキサンをキーワードとした研究は数多く行われている一方で、ロタキサン様構造構築の難しさのため、生化学分野への応用に関しては未だ課題が多く、更なるブレイクスルーが必要とされている。本研究では独自の研究で見出した標的核酸塩基のフリップアウトを誘起する機能性核酸を利用し、新しい核酸貫通構造体(ロタキサン様構造)を構築することおよびその機能探索によりその構造体の生物機能、特に翻訳反応のコントロールを目標とし研究を行った。最初に設計した分子では貫通構造体の形成に至らなかったため、昨年度、以前の研究の知見をもとに、テイル鎖をもつ環状化核酸のスリッピングによる標的RNAへの貫通構造体形成を試み、合成法などの改善、擬ロタキサンやカテナンなどの貫通構造体形成による非共有結合型のラベル化・修飾に成功した。この方法に基づき、翻訳の制御への応用に取り組んだ。mRNAを軸に擬ロタキサンを形成させ、翻訳効率を確認したところ、顕著な変化は確認できなかった。今回形成させた構造では、ヘリケースなどの酵素によって複合体が解離させられている可能性を考えている。一方で、検討中に擬ロタキサン構造の形成を加速させる興味深い方法を発見した。標的配列のすぐ隣に、二本鎖を形成するサポート核酸を用いることで最大15倍の形成加速が観測された。カテナン形成の技術と併せると、本系は環状核酸を簡便かつ高効率で非共有結合的に修飾することが可能になり、環状核酸の機能化に有用になると考えている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
Journal of Synthetic Organic Chemistry, Japan
巻: 81 ページ: 809~816
10.5059/yukigoseikyokaishi.81.809
Chemical Communications
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10.1039/d2cc06189a
https://www2.tagen.tohoku.ac.jp/lab/nagatsugi/html/