研究課題
フェロトーシスは、生体膜脂質の鉄依存的酸化で誘導される新たな自発的細胞死で、癌抑制効果や循環器疾患発症との関連性から、最近注目されている。脂質酸化消去酵素GPX4は、酸化脂質の除去によってフェロトーシス抑制に働く重要な制御分子である。しかし、フェロトーシスを誘導する内因性因子による生理的刺激や、GPX4の発現・活性制御機構については不明な点が多く残されている。そこで本研究では、独自に同定した内因性因子やキナーゼ分子によるGPX4の新たな発現・活性制御機構の解析から、その生物学的意義と病態生理学的役割の解明を目指すことを目的とした。これまでに、血清除去に伴ってGPX4のタンパク発現が減少することを見出していたが、詳細な解析の結果、GPX4のタンパク発現維持に重要な血清中成分Yの同定に至った。実際に、血清中成分Yの除去によりGPX4のタンパク発現が減少すること、逆に、Yの添加によりGPX4の発現が上昇することを明らかにできた。また、我々が独自に見出したストレス応答キナーゼ分子XによるGPX4のリン酸化について、詳細な解析により、そのリン酸化部位の同定に至った。リン酸化抗体の作製にも成功し、実際に、同定したリン酸化部位がリン酸化を受けていることを、本抗体を用いたイムノブロットにより確認できた。GPX4リン酸化部位のリン酸化ミミック変異体(Asp、Gluへの置換)では、酵素活性が著しく減少していた。以上の結果より、キナーゼ分子Xがストレス刺激依存的にGPX4をリン酸化することで、その酵素活性を抑制し、フェロトーシスを促進することが示唆された。本研究全体を通して、GPX4の発現・活性の制御において重要な役割を担う内因性因子Yおよびリン酸化修飾とその責任キナーゼ分子Xを同定することができた。今後は、本機構の詳細な生理的・病理的意義の解明を目指していきたい。
東北大学薬学部衛生化学分野http://www.pharm.tohoku.ac.jp/~eisei/eisei.HP/
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