研究課題
LPIAT1を欠損したHuh-7細胞は、LPIAT1欠損マウス肝臓と同様にアラキドン酸含有PI の減少とオレイン酸含有PI の増加、中性脂質の蓄積がみられる。この細胞に[14C]グリセロールを添加し、[14C]ラベルされたPI の分解を経時的に調べると、LPIAT1 KO 細胞では野生型に比べてPI の分解が顕著に亢進する。このPI分解の亢進において、分解されるPIに分子種特異性があるか調べるために、d8グリセロールラベルによる標識PIのLC-MSでの検出系を確立した。この分析系を用いて、PIの分解を分子種レベルで調べた結果、アラキドン酸を含むPI分子種は半減期が長いのに対し、アラキドン酸を含まないPI分子種は半減期が短かった。このことから、PIの分解には分子種特異性があることがわかった。次に[14C]グリセロールを用いた細胞レベルでのPI 分解アッセイを利用して、RNAi スクリーニングをおこなった。候補分子として、Huh-7で発現が確認されたPLCファミリー、PI-PLC活性が報告されているPLCXDファミリーおよびSMSr、およびPIサイクルに関わるNir2, Nir3を対象とした。その結果、どの遺伝子の発現抑制によってもLPIAT1 KO細胞での[14C]PIの分解が抑制されなかった。以上から、LPIAT1 KO細胞でPIの分解を担う分子は既知のPI-PLCではないことが示唆された。そこで次に、各種阻害剤を添加し、PI分解を抑制する化合物をスクリーニングした。その結果、PLCの一般的な阻害剤であるU73122やリソソームの酸性化を抑制するクロロキンではLPIAT1 KO 細胞におけるPI分解の亢進を抑制できなかった。一方で、脂質のホスファターゼを抑制する阻害剤の1つがLPIAT1 KO 細胞におけるPI分解の亢進を抑制することを見出した。
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