研究課題/領域番号 |
21K19334
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白川 久志 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (50402798)
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研究期間 (年度) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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キーワード | 中枢神経疾患 / CNS炎症 / Oraiチャネル / グリア細胞 / アストロサイト / ミクログリア / PGE2 / 血液脳関門 |
研究実績の概要 |
多くの中枢神経疾患では、慢性炎症が何らかの形により脳内で伝播し、最終的に神経細胞の変性/脱落に至ることが示唆されるようになってきたが、そのメカニズムには不明な点が多い。 本年は、血液脳関門を構成する細胞群のうちアストロサイトに着目した。アストロサイトは中枢神経系の恒常性維持に寄与するグリア細胞であるが、病態時には様々な刺激に応答して炎症の増悪あるいは抑制に寄与しており、その分子機構の解明が中枢神経系の病態メカニズムを理解する上で重要となる。認知症を含む中枢神経疾患の発症時には、ミクログリア由来と想定される炎症性サイトカインのレベルが上昇する。そこで本研究では、代表的な炎症性サイトカインであるTNFαとIL1αによりアストロサイトの応答について分子レベルで検討した。TNFαとIL1αを共処置したマウス初代培養アストロサイトにおいて、ストア作動性Ca2+流入 (SOCE) を担うチャネルであるOraiおよびTRPCの遺伝子発現変化を網羅的に調べたところ、Orai2の遺伝子発現が増加していた。そこで、Orai2をノックダウンしたアストロサイトにおいてTNFα / IL1α刺激を受けた際に発現変動する遺伝子をマイクロアレイにより網羅的に調べた結果、COX2の遺伝子発現およびプロスタグランジンE2(PGE2)産生量が野生型 (WT) と比べて増加していた。またOrai2-KOマウス由来のアストロサイトにおいても、TNFα / IL1α刺激を受けた際にCOX2およびmPGES1の遺伝子発現、PGE2産生量がWTと比べて増加していた。さらに、このときOrai2-KOアストロサイトではOrai1の遺伝子発現、SOCEによるCa2+流入がWTと比べて増加していた。以上の結果から、TNFα / IL1α刺激を受けたアストロサイトにおいてOrai2はPGE2産生を抑制することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年は、研究対象とする細胞群のうち、アストロサイトの炎症応答メカニズムについて解析した結果、Orai2という新たな制御分子と、PGE2経路という新たな炎症関連シグナルを同定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
研究対象とする他の細胞群に関しても同様の手法で取り組むことで、新たな制御分子と新たな炎症伝播メカニズムを追究する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する遺伝子改変マウスの交配に難があり、in vitroおよびin vivo動物実験計画に遅延が生じたため、次年度使用額が生じた。その問題は現在解決に向かいつつあるので、次年度の計画は順調に遂行できる予定である。
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