自閉症は、社会性行動等に障害が認められる頻度が高い神経発達障害の1つである。病態の 分子メカニズムはほとんど不明であり、多数の患者を説明できる明確な分子病因は同定さ れておらず、また中核症状に対する治療薬は存在しない。そこで本研究では、独自に開発したヒト型自閉症モデルマウス3q29欠失マウスを用いて、社会性行動の制御に関わる神経活動の同定及び治療法の開発に繋げる成果をえることを目指した。その結果、3q29欠失マウスの大脳皮質のオキシトシン含有量が野生型マウスと比較して少なく、3q29欠失マウスの社会性行動異常がオキシトシンの投与によって回復することを明らかにした。また、社会性行動時の全脳活動マッピングにより特定の脳領域の過活動も検出し、その領域の活動制御によっても社会性行動異常が回復することをあきらかにした。これらの成果は、神経発達障害である自閉症を大人になった後でも治療を可能にする戦略に資するものである。
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